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月刊「現代農業」/2020/2/5 12:10
http://www.ruralnet.or.jp/syutyo/2020/202003.htm

多様化する技術を活かして、イネと田んぼを農家・地域の元気の源泉に/『イネ大事典』の発行にあたって

 目次
◆多様化するイネつくり・10の事例
◆技術開発が進むイネの直播と低コストの水田輪作
◆気候変動のなかで米の品質、食味を確保する
◆環境保全型イネつくりにむけたアイデア
◆多様性を活かし、それぞれの地域にあった稲作を

 農文協創立80周年を記念して、そして何より、米の品質・食味の向上と、低コストで省力的な栽培・経営の確立を応援したいと準備を進めてきた『イネ大事典』が、新春早々完成した。

『農業技術大系・作物編』や『病害虫診断防除編』『現代農業』などに収録してきた膨大な技術研究成果と農家の経験・工夫を吟味、再編して上・下巻+別巻の全3冊に。執筆者200余名、総ページ数2178ページの大作だが、関心や現場で起きている問題・課題にあわせて、あるいはイネの生育や作業に添って調べる、使える事典をめざした。

 上巻はいわば基礎編で、生育診断や技術の拠り所となるイネの生理などの基礎と技術の基本を収録。下巻は応用編で、省力化や食味向上などの現場課題に応える各種の技術から高温障害などの気象災害、病害虫・雑草、収穫・調製、品質・食味、生産者事例で構成。そして、業務・加工用の品種や各県の奨励品種などの品種情報を集約して別巻とした。

 3万円を超える高価にも関わらず、お陰さまで農家の方々から、発行前に1000セットを上まわる予約注文をいただいた。省力・経費削減技術を網羅していることに納得してくれた大規模法人農家、食味勝負でイネつくりを守りたいという中山間の農家、新規就農して有機栽培に取り組む若手、息子に勉強させようという親父さんなど、本書の普及活動のなかで多くの農家に励まされている。

 イネと田んぼはずっと、農家・地域と農文協の元気の源泉であった。そのことに変わりはないことを改めて感じている。

多様化するイネつくり・10の事例

 はじめに、下巻の生産者事例にふれたい。『作物編』ではたくさんの事例を掲載しているが、ページの制約があるなかで『イネ大事典』にふさわしい事例をと考え、以下の10事例を選んだ(北から、執筆者略)。

            *

 以上の事例コーナーとは別に、下巻の「各種の育苗技術」では、広がりをみせる密苗(高密度播種の稚苗)をめぐり、福島県の農家・三瓶民哉さんの事例を紹介。

 密苗をいち早く取り入れた三瓶さん。確かに、目に見えて省力化と低コスト化が実現できる画期的な技術ではあるが、「昔の『厚まきによる徒長苗』に逆戻りしては元も子もない」と考え、いろいろ工夫してきた。催芽モミの低温処理で出芽を揃える低温ヤロビゼーション、出芽直後から苗を5〜7日おきに踏み倒し鍛える「健苗ローラー」、リン酸資材の散布、育苗初期から外気に当てて育てる露地プール育苗などだ。これまでの技術・工夫を活かすことで密苗という新技術もうまくこなせるということだろう。

 ところで三瓶さんは、密苗を疎植栽培し「への字」に育てることができないかと考えている。疎植といえば先の薄井さんのように、ポット育苗で太茎大穂をめざすのが王道だろうが、下巻の「疎植栽培」では「密播育苗」と組み合わせる方法を紹介。「育苗箱全量施肥」と組み合わせる方法もあり、省力的な疎植栽培が開発されている。

技術開発が進むイネの直播と低コストの水田輪作

 事例では、イネの直播栽培と、これを組み込んだ水田輪作をいくつか紹介したが、いずれもこの間、技術開発が大きく進んだ分野だ。

 下巻の「直播栽培」では、作業効率がよく大面積がこなせ、寒地にも導入が進む乾田直播の方法として、作業スピードを飛躍的に向上できるグレーンドリル利用、固い圃場の深い位置(5cm)に播種するため鳥害の心配がなく倒伏にも強い不耕起V溝直播、ディスク駆動式播種機による不耕起播種などを紹介。

 一方、適用範囲が広く、播種機以外の作業機の多くが移植栽培と共通するために取り組みやすい湛水直播では、代かき後に落水せずに播種できる鉄コーティング種子やべんモリ被覆種子利用を掲載。播種深度を確保して転び苗や浮き苗の発生を抑え、複数種子で株を形成し耐倒伏性の向上を図る打ち込み点播方式もある。ほかに、高精度水稲湛水条播機やスクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)の被害回避、雑草防除を紹介した。

 こうしたイネの直播にダイズやムギを組み合わせた、低コストで生産性の高い輪作体系が地域ごとに開発され、下巻の「輪作体系」では「日本海側・寒冷地2年3作」「寒冷地1年1作」「太平洋側・寒冷地2年3作」「暖地2毛作」について掲載した。「耕うん同時畝立て播種機のムギ・ダイズ汎用利用」や「ダイズ有芯部分耕播種」「小明渠浅耕播種機」、中耕・培土不要のダイズ「狭畦栽培」「ムギ表面散播」などの省力的な方法を組み合わせて、低コストで高い生産性をねらう。浅耕や不耕起で省力・省エネをはかり、前作の残肥や残渣をうまく活かして減肥を進めるなど、環境保全的な水田輪作でもある。

気候変動のなかで米の品質、食味を確保する

 こうして多様化するイネつくりだが、いずれにも共通するのが、これからも予想される気候変動のなかで米の品質、食味をどう確保するかである。

 その大きな課題の一つに高温障害がある。昨年も新潟県をはじめ、各地で登熟期の高温・寡照による白未熟粒の増加や充実不足による検査等級の低下が大きな問題となった。

 下巻の「気象災害」では、「移植時期」や「高温耐性品種」に関する記事ともに生育後期の栄養不足が問題とし、「高温条件下でコメの外観品質と食味を両立させる窒素施肥法」では、全量元肥方式でも高温年には追肥が有効としている。さらに水管理にもふれ、「深植弱深水栽培による白未熟粒の抑制」では、植付け深5cm程度で移植し、湛水深10cmで管理する取り入れやすい方法を紹介。穂重型の生育で白未熟粒の発生を抑制するという。

 高温障害対策の基本は、結局は、生育後半まで高い活力を維持することであり、それは品質・食味に直結する。

 下巻の「品質・食味」の「窒素制御と米の粒重増加によるタンパク質制御の理論と実際」では、これまで推奨されてきたチッソ施肥量の制御だけでは、食味を左右するタンパク質含有率のこれ以上の低下は望めないとし、粒重増加のための光合成活性の向上を加えた総合的な栽培管理が求められると強調している。

 この「品質・食味」では、マグネシウムやケイ酸の施用などの積極策も提案。さらに「米の食味ポテンシャルを発揮させる栽培管理技術」では、「稈長+穂長の長い主茎および低次・低分げつの食味がほかの分げつに比べすぐれている」ことを出発点に、健苗づくり、深水管理や中干しによる過剰な分げつの抑制、幼穂形成期の栄養診断に基づく穂肥施用、根の機能維持のための水管理など、一連の技術課題を整理し、「米の食味ポテンシャルを発揮させる栽培技術の進展は、わが国の米つくり技術のさらなる向上だけでなく、これまで培ってきた稲作文化の継承にもつながる」という言葉で締めくくっている。

環境保全型イネつくりにむけたアイデア

 事例では岡山県・赤木さんの「菜の花稲作」を紹介したが、有機農業を含め環境保全型イネつくりで地域住民や消費者を惹きつけていくことは、今後とも大事になっていくだろう。そのためのアイデアをいろいろ得られるのも『イネ大事典』の魅力である。

 下巻の「独自な発想の技術」では、有機栽培で求められる「除草剤に頼らない栽培」を紹介。米ぬかペレット、チェーン除草、菜の花など「アブラナ収穫残渣の抑草・肥料効果」のほか、自然農法国際研究開発センターからの提案も掲載。同センターでは自然農法に取り組む農家への全国調査を行ない、雑草抑制に成功している農家に共通する管理技術として、秋や春の「うね立て耕起」を見出した。抑草のメカニズムとして、ウネ立てによる排水性向上で土壌中のイナワラ分解が進み、還元条件を好む雑草が抑えられること。また冬期の低温・乾燥で雑草種子が休眠から覚めにくくなり、多年生雑草の塊茎も死滅。さらにトロトロ層の形成で雑草種子を埋没させることをあげている。

 なお、この章では、『現代農業』記事特選コーナーも設け、マツの枝で藻の退治、カメムシは焼き肉のタレ7500倍液、ジャンボタニシをタケノコで一網打尽、食味をあげるマグネシウム施用や転炉スラグ&ケイ酸資材の流し込み、根腐れを招く鉄不足対策、極浅水代かきなど、『現代農業』で話題を呼んだ工夫を紹介した。

 下巻の「圃場管理」では、レーザー制御のプラウとレベラーによる均平化、各種の暗渠や地下水位制御システムに加え、グラウンドカバープランツによる畦畔管理、斑点米を減らす畦畔2回連続草刈り技術、高刈りによるイネ科雑草と斑点米カメムシの抑制など、水田の景観と害虫がでにくい環境づくりに役立つアイデアを紹介している。

多様性を活かし、それぞれの地域にあった稲作を

 この『イネ大事典』では、栽培だけでなく、収穫から乾燥、モミすり、精米、穀粒選別、貯蔵、計量・包装、穀物共同乾燥施設、さらに米品質の計測まで、収穫・調製の技術も重視した。下巻の「収穫・調製」では、「米の美味しさ、といわれるものの半分は収穫後(ポストハーベスト)技術が握っている」と考える(株)サタケの技術陣が、その基本と最新知見を紹介している。

 最後に「基礎編」である上巻の内容を紹介したい。章立ては「イネの植物特性と起源・分化」「イネの形態と発育」「イネの生理作用」「イネの生育と技術」の4章。

「イネの形態と発育」では種子の構造、発芽のしくみから、葉、茎、根など正確な形態図を豊富に使いながら解説。イネの形態研究の先達として著名な星川清親氏(東北大学)の原作に若手研究者が改訂を加え、最高かつ最新のイネ図鑑になっている。

「イネの生理作用」では、寒地・暖地などの気象条件や土壌条件、播種密度と苗質などの栽培条件とイネの生理・生育の関係を整理し、さらに各元素の吸収と働き、葉の呼吸や光合成を左右する水分生理など、イネの健全生育に向けた環境管理の基礎知見を網羅している。

 そして「イネの生育と技術」では、床土、播種密度、出芽法、床土、ムレ苗、温湯消毒など育苗に始まり、栽植密度、除草剤の害、側条施肥、一発肥料、深水管理、中干し、穂肥と食味、倒伏診断など、現場で課題になる92テーマについて、各研究者が、現地調査を含む自身の研究とそれまでの研究蓄積を踏まえて執筆。それは、『農業技術大系』の編集方針がそうであるように研究論文ではなく、現場で生きる実践的な技術提案である。

 この章には、研究室と現場をつないで分けつ研究を精力的に進めた本田強氏(元宮城教育大学)の研究成果も掲載した。本田氏は農家とともに疎植栽培を推進した研究者でもあり、下巻の「疎植栽培」の「疎植栽培の歴史と意義、生育の特徴」でこう記している。

「疎植栽培をかりに


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