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月刊「現代農業」/2019/12/5 12:10
http://www.ruralnet.or.jp/syutyo/2020/202001.htm

世界の潮流は変わった 小農・家族農業こそ、SDGsの大事な柱/

 目次
◆広がる国際的な新たな潮流
◆ 「国際家族農業年」と 「小農宣言」
◆「国際協同組合年」、「国際土壌年」
◆先進国でも根強い家族経営と 「再小農化」の動き
◆家族農業こそ SDGsの大事な柱
◆「新しい小農」の時代を、 農家に学び、地域とともに

 先の台風19号は死者93人、行方不明3人、71の河川が決壊し、住宅被害8万棟余、農作物や施設、農地にも甚大な被害をもたらした。被災された皆様に心からお見舞い申し上げたい。前年には西日本豪雨、その前年には九州北部豪雨と、毎年のように集中豪雨災害に見舞われ、それには海水温の上昇など地球温暖化が関与していると考えられている。世界的にも北米や北欧、アマゾンなどで高温と乾燥を主因とする大規模な森林火災が発生し、大西洋、インド洋沿岸ではハリケーンなど、地球温暖化の影響とみられる災害が続発している。

 去る9月23日の国連「気候行動サミット」では、16歳の少女、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんが涙ながらにこう訴えた。

「多くの人たちが苦しんでいます。多くの人たちが死んでいます。すべての生態系が破壊されています。私たちは大量絶滅の始まりにいます。それなのにあなたたちが話しているのは、お金のことと、経済発展がいつまでも続くというおとぎ話ばかり。恥ずかしくないのでしょうか!」

「あなたたちは、私たちを失望させている。しかし、若い世代はあなたたちの裏切りに気づき始めています。未来の世代の目は、あなたたちに向けられている」

 このグレタさんの発言や活動に呼応するように、欧州を中心に世界中で400万人を超える若者たちが温暖化対策を訴えるデモを行なった。

 私たちはこれをどう受け止めたらいいのだろうか。

広がる国際的な新たな潮流

 グレタさんの訴えとともに、考えさせられたことがある。16歳の少女が国連という国際的舞台で各国首脳を前に発言したことについてである。

 国連(国際連合)というと年輩たちには、アメリカとソ連という2大陣営を中心に、政治的、軍事的かけひきを行なう場というイメージがあるだろうが、それはとうの昔の話だ。1945年、51カ国の加盟で設立された国連の加盟国数は20世紀末には188まで増えた。かつて植民地だった国々が20世紀中に次々独立。中南米、東南アジア、アフリカなど120を超える非同盟諸国やその他の新興国は21世紀に入っていよいよ発言力を強め、さらに市民活動団体などの非政府組織や科学者たちが国際政治の場で影響力を強めている。

 その象徴の一つが2017年7月、122カ国の賛成多数で採択された「核兵器禁止条約」である。日本の被爆者団体の活動も力になって、核兵器の全廃と根絶を目的とする人類史上初の条約が成立した。核保有国や日本は不参加を決めているが、紆余曲折があってもこの人類史的な流れを押しとどめることはできないであろう。

 こうした国際的な新たな潮流のなかで、この間、「小農・家族農業」を守る動きも急速に活発化している。その背景には、多国籍アグリビジネスをはじめとするグローバル大企業の圧倒的市場支配力のもと、各国・地域の資源や食糧、農業への支配・収奪が強まり、これによる貧困や格差の拡大、都市への人口集中と地域の荒廃が進んできたことへの危機感がある。

 この新たな潮流について改めてみてみたい。

「国際家族農業年」と 「小農宣言」

 2014年、国連・食糧農業機関(FAO)はこの年を「国際家族農業年」と定めた。その転機になったのが2008年の食料危機と経済危機の勃発。この時、グローバル大企業の支配のなかで、市場経済主義を進めた国、地域ほど、圧倒的多数を占める小規模家族経営は購入資材と輸入食料への依存の強まりのもと、生産資材と穀物価格の高騰に苦しんだ。こうして国際社会は企業的農業をめざす市場原理モデルでは食料危機に対処できず、貧困の撲滅というミレニアム開発目標も達成できないことを確信したのである。

 国連・FAОは輸出志向型の大企業が優遇される大規模経営偏重政策に反省を求め、「政策と公的投資による適切な支援が行なわれれば、食料保障、食料主権、経済成長、雇用創出、貧困削減、空間的・社会経済的不平等の是正に大きく貢献する能力が小規模農業には備わっている」とし、各国政府に対して、小規模家族農業を支援するよう要請した(注1)。その後、国連は2019年〜2028年を「家族農業の10年」と定めた。

  注1  『人口・食料・資源・環境 家族農業が世界の未来を拓く』国連世界食料保障委員会専門家ハイレベル・パネル著 家族農業研究会・農林中金総合研究所 共訳

 そして2018年12月、国連総会は「小農と農村で働く人びとの権利宣言」(小農宣言)を採択した。この小農宣言の特徴は、「小農」の範囲を家族農業だけでなく、農林水産業全体に、さらにはこれを支える地域にまで広げ、「集団的権利」を掲げたことである。

 宣言では保障されるべき権利、逆にいうとグローバル化のなかで侵されてきた国と地域の権利として生存権、生活の質の向上への権利、結社や自由な意見を表明する権利、土地とテリトリーへの権利、価格と市場を決める自由、農業生産の手法への権利、種子と伝統農業の知と慣行への権利、情報と農業生産への権利、地元農業価値の保護、生物多様性の権利、環境を保全する権利、正義への権利……などを掲げ、男女平等や協同組合の支援も謳われている(注2)。

  注2  『よくわかる 国連「家族農業の10年」と「小農の権利宣言」』小規模家族農業ネットワークジャパン 編

「国際協同組合年」、「国際土壌年」

 これに先立つ2012年は「国際協同組合年」であった。国連は、とくに途上国の発展には協同組合が欠かせないというメッセージを世界に発し、そこでは、欧米型の専門農協方式ではなく、家族農業を守る日本型の総合農協が高く評価された。

 そして2015年は「国際土壌年」である。FAO事務局長グラジアノ・ダ・シルバ氏は、国際土壌年のスタートに当たって、こう述べている。

「世界の食料生産には健全な土壌が不可欠だが、この重要で『寡黙な同志』である土壌に対して我々は十分に配慮していない」「残念ながら、世界の土壌資源の33%は劣化している。人類が土壌に与える圧力は臨界極限に達しており、土壌の本質的な機能を減少させ、時には消滅させている」

 FAOは、「新たな取り組みが採用されない限り、2050年の世界の一人当たり耕作可能地は、1960年の水準の4分の1になる」とし、さらに、地球温暖化が土壌の水食、風食、砂漠化、土壌有機物の消耗など土壌破壊、土壌劣化を促進し、それがさらに温暖化を進めるという悪循環に強い危惧を示した(注3)。

  注3  国際土壌年記念出版『世界の土・日本の土は今 地球環境・異常気象・食料問題を土からみると』日本土壌肥料学会編著

 さらに土壌劣化の背景には、急速な近代化のもと、家族農業によって維持されてきた伝統的な土地利用が崩れてきたこともあり、「国際土壌年」と「国際家族農業年」は強く関係づけられている。FAO駐日連絡事務所のボリコ・M・チャールズ所長(コンゴ民主共和国)は「農民」誌のインタビューでこう述べている。

「肥料や農薬の不適切な使用などがもたらす土壌劣化の進行は、農業の生産性を低下させるものであり、放置すれば食料生産にマイナスの影響を与えます。土壌劣化を防ぎ、環境に配慮した農業技術を導入し、家族農業をさらに発展させることが今後の食料生産の鍵となります」

 そして日本の農村の印象と期待をこう語る。

「自分だけでなく、周りがよくなるよう助け合いながら、そのコミュニティーをよくしようという意識をもっていることに感銘を受けました。さらに、地域の伝統的な食料生産をできるだけ残していこうと、都会で働いていた若者が農村に戻って農業を継いでいることもすばらしいことだと思いました」

先進国でも根強い家族経営と 「再小農化」の動き

 途上国だけの話ではない。「家族農業年」の報告書では、近代的、企業的農業の先進地である西欧でも、兼業をまじえた家族経営が根強いことをこう指摘している。

「昨今の欧州危機以前でさえ、オランダの農業経営の80%が、男女の別を問わず、農外賃労働に従事していた。平均すると稼得所得の30〜40%が農外雇用から得られた計算になる。オランダでは、こうした多様な経済活動がなければ、農業経営の多くは経営を存続することができなかっただろう」

 フランスでも農業経営の半数以上が「その他の有給活動」に従事し、イタリアでは全農業経営の90%以上が多就業活動を行なっている。

「より重要なことは、フルタイムでの農業生産に従事している専門特化した集約的農業経営が、近年の経済・金融危機の際にはたいへん脆弱であったという事実である。デンマークやオランダでは、そうした経営の多くが、農場の閉鎖に追い込まれたのである」

「こうした多様化が生じるのは、農業が農家世帯のニーズを満たせないから生計を『多様化する』という過程だけでなく、北の国々でも南の国々でも、歴史的にみれば多様化が農業の構造的特徴であるからである」

 そして一方、西欧の企業的農業経営では「再小農化」の動きが強まっている。①事業と所得源の多角化、②有機農業や特産物生産などの高付加価値化、③地域あるいは農場内資源の有効利用という三つの方向性をもつ「新しい小農」が、新自由主義時代を農業者が生き残る道として注目されるようになった(注4)。

  注4  年明け発行の本誌の姉妹雑誌「季刊地域」40号では、「再小農化」の小特集を組み、秋津元輝さん(京都大学)さんの論文ほか、オランダやドイツの動きを紹介。

家族農業こそ SDGsの大事な柱

 こうした新しい潮流のなかに今、話題のSDGsがある。SDGs(エスディージーズ、Sustainable Develop-ment Goals:持続可能な開発目標)は、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で記載された2016年から2030年までの国際目標。貧困をなくそう、飢餓をゼロに、エネルギーをみんなに そしてクリーンに、人や国の不平等をなくそう、海の豊かさを守ろうなど、「世界を変革するための17の目標」を掲げたこのSDGsは、これから10年、行政・自治体、企業、協同組合、市民運動などのキーワードになるだろう。営利のみを求め、貧困や環境悪化に加担する企業は厳しい目にさらされる時代になった。

 国連「小農宣言」では棄権した日本政府もこのSDGsには熱心で、政府はSDGs推進本部を設置。だが、その中身は大いに気になる。

「推進本部 アクションプラン2019」では、「『成長戦略フォローアップ』:SDGsの達成にむけた世界的な動きは、新たな事業機会をもたらす」、「ビジネス主導の非連続なイノベーションを通じた『環境と成長の好循環』の実現」などを掲げ、経済成長のためにSDGsを利用するという姿勢を打ち出している。農業面では「農林水産業・食品産業のイノベーションやスマート農林水産業の推進、成長産業化等」を掲げ、そこには家族農業も食料自給率の向上という言葉もない。それは、SDGsに込めた世界の願いに反するのではないか。

 小農・家族経営は食料・環境問題を解決し、地域の文化と世界の平和をつくる。世界の新たな潮流は、家族農業こそSDGsの大事な柱なのだと考えている。

「新しい小農」の時代を、 農家に学び、地域とともに

 日本の研究者や農家のなかでも「新しい小農」をめぐる議論が生まれている。日本村落研究学会では小農をテーマに研究会を開催、その成果を『小農の復権』(【年報】村落社会研究55・農文協刊)としてまとめた。

 その中の松平尚也さん(京都大学)の論文では、西欧の再小農化や九州の農家、研究者が立ち上げた「小農学会」をめぐる考察とともに、小農に関する『現代農業』の「主張」から農文協の活動にふれている。

「農文協は、一九六一年以降の基本法農政に基づく農業近代化の矛盾が明らかになるなかで、近代化批判とともに農家の『自給』的側面を対抗の拠り所として論陣をはってきた。そのなかで、一九七〇年代後半に辿り着いた農業のあり方が『自給型小農複合経営』であった。その後四〇年の間にこのあり方は以下の三つの方向性へと多様な変化を遂げたとしている。

 その方向性とは、一、『自給』から『自給の社会化』。二、『複合経営』から『多彩・多層の複合経営』、三、『小農』から『新たな協同』であった(略)。

 一では自給という概念が農家女性の暮らしと経営を守る運動という方向性で社会化し、その流れがさらに産直や直売所活動へと発展した点。二の複合経営は時代とともに多様化し、作物の複合化と販売や加工を取り入れた農業の六次産業化や都市・農村交流事業などの多彩・多層化した点が指摘され、その時代の流れに合致した実践をもとにして『新しい小農』が形成されていくと結論づけている」

「自給の社会化」も「多彩・多層の複合経営」も集落営農など「新たな協同」も、さまざまな困難のなかで農家、地域が生み出してきたものである。法人・大規模経営も地域を支え、地域に支えられている。そして今、「新たな協同」は地域住民や都市民、「田園回帰」する若者を巻き込んで大きな流れになっている。

 農文協は2020年3月、創立80周年を迎える。さまざまな「危機」を乗り越える知恵と工夫を発揮してきた「農家に学び、地域とともに」、これからも元気に歩み続けたい。


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