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月刊「現代農業」/2019/4/3 16:10
http://www.ruralnet.or.jp/syutyo/2019/201905.htm

地域おこし協力隊の活かし方/「10年の挑戦」から見えてきたこと

 目次
◆5年間で5倍に増加、6割は定住
◆地域の裁量が大きい「奇跡の制度」
◆地域おこし協力隊の本分とは
◆隊員が広げる住民自治の新しい姿
◆受け入れ側に求められること

5年間で5倍に増加、6割は定住

 都市の若者が田舎に移り住んで地域のために活動する「地域おこし協力隊」。この制度が始まって今年で10年になる。総務省によると2019年度の隊員数は約5000人で、この5年間で約5倍に増加。受け入れる市町村など地方公共団体も増え続けて、997になった。隊員の約6割は任期終了後も定住し、同一市町村内に定住した隊員の約3割は自ら起業しているという。

 本誌でもこのところ、「地域おこし協力隊」の隊員、元隊員が登場する記事が増えている。

 今年1月号の「高冷地を生かしたムラサキ栽培 化粧品も作った」を執筆いただいた滋賀県の前川真司さん。高校教師の時に地元にゆかりの深い植物・ムラサキを知り、「誰かがムラサキを地域の宝に育てなければ」と決意。教員を辞め、地域おこし協力隊として奥永源寺地域へ移住した。農業法人(株)みんなの奥永源寺を設立し、地元の農家とともにムラサキを素材にした化粧品の開発・生産に取り組んでいる。

 昨年8月号の「外国人カモン! 茶農家3軒でグリーンティーリズム」で紹介したのは、茶園散歩やお茶の淹れ方体験ができる農家民泊。この取り組みの事務局を務めるのも、地域おこし協力隊として町に来ていた飯塚将次さんだった。

「田畑のイベント上手になる」(2017年9月号)に登場した長野県上田市・石井史郎さんは、子供たちの独立を機に夫婦で上田市に移住。地域おこし協力隊として稲倉の棚田保全委員会事務局を務めている。「獣害対策を練るための集落環境診断のすすめ」(2017年7月号)に登場する石川盛和さんは元隊員。ワナと猟銃の狩猟免許を取得し、集落のイノシシ対策で活躍している

 地域おこし協力隊の制度は、人口減少や高齢化が進む地方の人材確保や地域活性化を目的に、総務省が2009年度に始めたもの。地域ブランドや地場産品の開発・販売・PRなどの地域おこし支援や、観光資源掘り起こし、情報発信などの観光振興、農林業への従事、住民の生活支援などが任務だ。市町村が隊員を募集し、1〜3年の任期で委嘱する(3年のところが多い)。報酬以外に生活費や住宅も提供し、国はその人件費や活動費として隊員1人当たり年350万円程度を支援する。

地域の裁量が大きい「奇跡の制度」

 地域おこし協力隊の財源は、地方自治体間の財源の不均衡を調整するために、国が地方に代わって税金を徴収し再配分する地方交付税である。地方財政はきびしさを増しているが、国は引き続き「地域おこし協力隊」の拡充をめざしている。

 総務省は昨年6月、「地域おこし協力隊の拡充—6年後に8千人」を発表した。その要点を見ると、「隊員数の拡充」については、シニア層や在住外国人(留学生等)、青年海外協力隊経験者、「ふるさとワーキングホリデー」参加者など、応募者の裾野を拡大する。また、地域と多様に関わる「関係人口」を創出し、将来的な隊員のなり手の確保を図る。さらに後継者がいない地方の事業者の経営を受け継ぐ「事業承継」の支援や、「おためし地域おこし協力隊(仮称)」の創設、さらに今後増える任期を終了した元隊員のネットワークをつくり、隊員の受入・サポート体制の充実を図るとしている。

 新刊『地域おこし協力隊 10年の挑戦』(農文協)の中では、小田切徳美さん(明治大学)が「この制度は『奇跡の制度』だ」として、設立の背景にふれている。

「その前提には、(1)当時の農山村の現場からの『補助人』(サポート人)制度への強い要請の声、(2)当時、顕在化し始めた田園回帰の潮流、そして(3)大胆な制度設計を許容した政治的条件(政治の強い力)があった。筆者は、この政策の検討と決定を近い距離で見ていたが、その体験を踏まえて表現すれば、それは様々な条件が揃った一瞬の『間』を利用した『奇跡の制度』だと言える。別の表現をすれば、この制度は今、新たに創設しようとしても容易ではないであろう」

 地域おこし協力隊は、民主党政権時にスタート。2014年6月、安倍総理が山陰地方で隊員との懇談後、3年後3倍の3000人への増員を指示したこともあって、自治体と国民の関心が一気に高まったという経緯がある。地方が政治・中央を動かしてできた「地方の裁量が大きい仕組み」であり、地方自ら活かし方を工夫することによって展開してきた制度といえよう。そしてそこには、「田園回帰」という、地域の人々とかかわることで自分の生き方を見つけたいと願う若者たちがいた。

地域おこし協力隊の本分とは

 先述の本『地域おこし協力隊 10年の挑戦』(編著者—椎川忍、小田切徳美、佐藤啓太郎、地域活性化センター、移住・交流推進機構)は、今後ますます期待される地域おこし協力隊を、それぞれの地域で活かしていくときに役立ててもらおうと、関係者が力を合わせてつくったものだ。

 この「第I部 地域おこし協力隊によって地域はどう変わったか」では17事例を紹介。隊員を終了しその後もその地で活躍している元隊員(OB・OG)の事例が10、現役隊員の事例が4、そして隊員を受け入れてきた市町村行政の事例が三つ。これに研究者・関係機関による解説やデータなどがついて1冊となった。 

 第1部の隊員・元隊員による手記には、地域に受け入れてもらうまでの悩みや元気になるきっかけ、住民とともに楽しく進めた取り組み、さらに終了後の活動への想いが綴られている。

 これらの事例から浮かびあがってくるのは、協力隊ならではの地域住民と隊員との関係性である。

 1月号の「主張」でふれたが、地域づくりのプロセスを「足し算」と「掛け算」に分けてみると整理しやすい。足し算のプロセスはコツコツと積み上げていく取り組みで、たとえば高齢者の悩みや小さな希望をていねいに聞き「それでもこの地域で頑張りたい」という思いを掘り起こすプロセス。これに対し「掛け算のプロセス」は生産や販売などの事業を伴い、すべてが成功するわけではないが、掛け算のように大きく飛躍する可能性をはらんだ段階である。

 地域おこし協力隊は、その呼び方から「掛け算のプロセス」を舞台に活躍するものと思われがちだが、隊員たちの手記から浮かびあがってくるのは「足し算のプロセス」へのかかわりである。

 田口太郎さん(徳島大学)は本書の「地域おこし協力隊と地域自治」の項で、「地域おこし協力隊はこれまでのような外部の専門家などによる支援ではなく、住民の中に『住む』ことによって入り込み、住民と同じ目線にたった活動を展開することが大きな特徴である」として、さらにこう述べる。

「『自治とは』を考えると、地域の生活基盤としての『守り』が機能しており(中略)、その『守り』の部分の現状は外部から不定期にやってくる専門家では十分に把握することが難しい。(中略)ならば、現場に入り込む地域おこし協力隊に期待することは、地域の中に入り込みつつ、積極的には声をあげないような人々とのコミュニケーションを通じて、その自信と誇りを醸成していくことではないか。これまで声を発してこなかった住民たちは地域づくりに対して何も意思を持っていないのではなく、発する機会やその自信を失っている。そこに協力隊のような“今までとは違う”人材が入ることで、前向きな思いを表出する機会が作られ、協力隊がそれを後押しすることで『小さな成功体験』が生まれる。この成功体験から始まる住民主体の活動はこれまでのリーダーを中心とした地域づくりとは異なる、新しい動きである」

 また、「協力隊と地域活動の実践的論理—『第I部事例編』からの結像」のなかで、図司直也さん(法政大学)はこう記している。

「隊員たちが共通して実感しているのは、主役は地域、隊員は黒子だという姿勢である。『まず地元の皆さんの気持ちから少し前向きになってもらおう』(鹿屋市隊員・半田さん)、『地域おこしとは、シンプルに「人がその地で継続して住み続けることができる」その可能性を地域の方に感じていただけたら、それで十分ではないかと思った』(重信さん)、『住民が「この地域の一員でよかった」と思えるために必要な手法を、住民を巻き込みながら一緒に考え、実践し、成果を出すことができた』(河内さん)というように、その姿勢は隊員それぞれの実践に裏打ちされ様々な形で表現されている」。

 ここに地域おこし協力隊の本分があるのだろう。

隊員が広げる住民自治の新しい姿

 住民の中に住む地域おこし協力隊のもう一つの特徴は、3年たったら任期が終了することである。そのため、任期中、常に住民から「任期終了後の定住」の是非を問われ続けている。これをめぐって先の田口さんはこう述べる。

「良好な関係が築けていれば、任期終了後にたとえ地域に定住できなかったとしても様々な形での地域との関わりは続くケースが多い。(中略)昨今話題になっている『関係人口』のより地域側からの目線に立てば、都市部からアクセスしてくる『関係人口』よりも、一旦地域と深い関係づくりを経た上で、関係の枠組みにとどまるような『関係人口』のほうがより信頼関係も築きやすい。このような関係づくりを通じて地域側の視点も少しずつ外部に対して開いていき、さらには外部との付き合い方、距離の起き方なども体験的に理解することだろう。

 人口減少がさらに進むなかで、もはや『住民』だけで地域を持続的に運営していくことは非現実的である。一方でインフラが整備されたこともあり、過疎化が進んだ地域といえども都市部とのアクセスもかつてと比較して格段によくなっている。このような状況を肯定的に捉えることで『自治の担い手』を広義的に位置づけ、住民ではない関係者をも含めた住民自治の新しい姿が見えてくるだろう」。

 こうした広がりも「地域おこし協力隊」の特徴なのだろう。先の図司さんはこう記している。

「制度の焦点のひとつが『地域への定住』であり、制度を運用する行政側の本音もそこにあることは、担当者も率直に語っている。このような地域側の想いは、若い世代の隊員たちにしっかり届いており、それ故に活動した地域との縁を大事にしてくれている。その上で、彼らは自身の成長も見据えながら、『土の人』として根付いたり、『風の人』として新たな場所を選ぶ判断を下している」。

 図司さんは、「人口減少が進むなかで人材を取り合うことではなく、人材を共有しながら、それぞれに輝ける場所や機会をつくっていくことを地域おこし協力隊の制度を通して各地域が実践していくことを期待しています」という隊員の手記にふれ、「このような発想に立つ若い世代がこの制度を担ってくれているからこそ、受入地域側も彼らの人生をしっかり支えようと一緒に地域おこしを頑張れるのだろう」と言っている。

受け入れ側に求められること

 広がりのある定住、そんな地域おこし協力隊を受け入れる側には何が求められるのだろう。

 事例に登場する山形県鶴岡市の職員、前田哲佳さんはこう記している。

「本市においては、地域づくりの主役は、あくまでも地域住民であり、協力隊はそれらをサポートする人材という位置づけである。地域において協力隊への依存が強まれば、むしろ地域力が低下してしまうことも懸念されるため、まずは受入地域の方々に、制度そのものへの理解を深めてもらうことが肝要である。一握りの例外を除き、協力隊は配置さえすれば勝手に事業をうまく回してくれるようなスーパーマンではないし、人間ひとりが成せる活動には限界もある。住民の過度な期待は決して居心地のいいものではない。

 そのためにも、受入を目指す地域住民が、事前に協力隊制度について先発事例などから学ぶ機会などは有効であると考えている」。

 そして前田さんは、「地域みがきの重要性」を強調する。「行政が人材を選ぶのでは人材に地域が選ばれるという表現のほうがしっくりとくる」。「ここで言う『選ばれる地域』とは、単に生活面での利便性が高いといったことではなく、課題は抱えているけれども地域住民も一緒に考え行動に移していくような姿勢であったりと、“可能性”や“関わりしろ”が感じられ、そこでの暮らしや自分の取組が具体的にイメージできることなのではないかと考える。自分たちはまったく行動する気もなく『とりあえず来てくれ、何とかしてくれ』では誰も来たがらない。地域の人々がいきいきと暮らし、地域みがきを通じて絶えず魅力的な地域であろうとすることが、『選ばれる地域』になる道だと感じている」

 そんな住民の準備や理解は必要だが、「完璧な受入態勢」が必要というわけではないようだ。「協力隊と導入地域の実像」のなかで、平井太郎さん(弘前大学)は、データをもとにこう指摘する。

「事前に関係者間できっちり協議しておけば、(隊員との)情報交換態勢がない方がむしろ、活性化感が明確に高い。他方、事前協議が『あまり/まったくできていない』場合でも、隊員を交えた情報交換を整えれば活性化感ははっきりと、定住率もわずかに高まっている。つまり、『完璧な受入態勢』以上に大切なことは、きっちり事前に準備をしておいたら、後は隊員の自由度に任せたり、事前協議が不十分だったら、しっかり隊員の声に耳を傾けたりする、ある種の『度量の広さ』なのだ。こうした隊員を地域づくりの仲間として受け入れる姿勢が、隊員の潜在力を引き出す鍵となる」。

 地域自治に息吹を吹き込む地域おこし協力隊が増え続け、一方、住民主体で地域の課題解決につながる事業を展開する「地域運営組織」も増えている。2018年度の組織数は4787組織(711市町村)で、3年間で3倍になった(総務省)。ただし、この地域運営組織でも、「活動の担い手となる人材の不足」や「リーダーとなる人材の不足」に悩む組織が多く、地域おこし協力隊への期待は大きい。

 そしてJAへの期待である。今年3月のJA全国大会では、JAが地域運営組織と連携する重要性が決議された。地域の自治的な活動を支援する、それができる場面も力もJAはそなえている。


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