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月刊「現代農業」/2018/6/5 14:10
http://www.ruralnet.or.jp/syutyo/2018/201807.htm

森林経営管理法・森林環境税で日本の森林を破壊するな/

 目次
◆「私の森が消えた」
◆原木の安価な大量安定供給が目的!?「森林経営管理法案」
◆「違憲」の疑いすらある「森林経営管理法案」
◆小規模森林所有者は「意欲がない」のか
◆「小さい林業」の「意欲と能力」こそ評価せよ

「私の森が消えた」

 6月6日、前年の食料や農林水産業にかかわる優れた報道に贈られる「農業ジャーナリスト賞」を、MRT宮崎放送制作のドキュメンタリー番組「私の森が消えた——森林盗伐問題を追う」が受賞した。宮崎県内での放送は昨年5月だが、10月にTBS系列の「報道特集」で全国放送されて反響を呼び、今年1月には東京新聞「こちら特報部」が、そして3月にはNHK「おはよう日本」が全国的にも頻発している森林盗伐問題を追跡報道した。

 番組によると、宮崎県では、放送までの過去5年間に県警に寄せられた森林伐採に関する相談件数は84件。うち被害届が受理されたのはわずか6件に過ぎない。

 昨年9月に「宮崎県盗伐被害者の会」を結成し、会長となった海老原裕美さん(60歳)は宮崎市出身で現在は千葉市在住。海老原さんが生まれた年に両親が20aの山林を購入し、スギの苗木を植えた。2016年8月に帰省した際、母親と墓参りした帰りにスギ林があったはずの場所に行くと、スギの木は1本もなくなっており、盗伐被害に遭ったことがわかった。森林所有者や立木を買い受けた者などが立木を伐採する場合には、地元の市町村長に対して事前に「伐採及び伐採後の造林の届出書」を提出することが義務づけられている。海老原さんが宮崎市に情報公開請求をしてみると、そこには2000年に死亡した父親の名前が署名され、押印されていた。明らかに文書偽造による無断伐採だったのだ。

 それだけではない。海老原さんが被害を受けた面積はわずか20a。業者にとって大きな利益を得られる広さではない。番組ではドローンを飛ばし、空撮を試みた。その結果はナレーションによるとこうだ。

「すると、そこには、驚きの光景が。海老原さんの土地から伸びる作業道の先で、大規模な伐採が行なわれていたのだ。海老原さんの被害現場は、道路に面した平坦な場所にあるため、丸太を持ち出すための作業場として利用されたにすぎなかったのだ」

 番組には、海老原さん以外にも、両親と祖父が植林した32aのスギの木で家を建てることを計画し、地盤調査までしていたのに無断伐採され、家の建設を中止せざるを得なくなった男性や、1200〜1700本、580万〜800万円相当のスギやヒノキを無断伐採された女性が登場する。この女性は、伐採現場の真下に九州電力の水力発電所があり、大雨や洪水で放置された残材が流出し発電所に損害を与えた場合、損害賠償の責任が及ぶことを恐れていた。

 このように宮崎県で森林の盗伐(伐採業者の多くは「誤伐」と主張)が頻発している理由について番組は、一時期1m3当たり7000円を下回っていた木材価格が、バイオマス発電向けの低質材の単価の上昇と、輸出の拡大などで1万5000円前後で取り引きされるようになったことを挙げている。

 森林面積が県全体の76%を占める宮崎県。林業は県の代表的な産業の一つでスギの素材生産量は26年間全国1位を誇っている(バイオマスと輸出向けは素材生産量に含まれない)。しかし、盗伐・誤伐でなくとも「乱伐」「切り過ぎ」を指摘する声も多く、再造林のための苗木生産が追いつかなかったり、畜産県でもある同県で、C材以下の材がバイオマス発電に回るため、畜舎の敷料にするオガクズが不足するなどの影響も現れてきているという。

 こうした森林の盗伐や誤伐について調査した林野庁は、昨年4月から今年1月の間に所有者に無断で木が伐採されたという自治体などへの相談が全国で62件あったと発表した。故意に伐採した疑いがあるものが11件、認識違いによって伐採された誤伐が37件、状況不明なものが14件。警察に相談した例も28件あったという。

原木の安価な大量安定供給が目的!?
「森林経営管理法案」

 一方で現在開会中の国会では、「森林経営管理法案」が審議されている。その趣旨は、「林業の成長産業化と森林資源の適切な管理の両立を図るためには、市町村を介して林業経営の意欲の低い小規模零細な森林所有者の経営を意欲と能力のある林業経営者につなぐことで林業経営の集積・集約化を図るとともに、経済的に成り立たない森林については、市町村が自ら経営管理を行なう仕組みを構築する必要がある」というもの。

 そのために以下の措置を基本とする新たな仕組みを講ずるとしている。

(1)森林所有者に適切な経営管理を促すため、経営管理の責務を明確化するとともに

(2)森林所有者自らが経営管理を実行できない場合に、市町村が経営管理の委託を受け意欲と能力のある林業経営者に再委託する

(3)再委託できない森林および再委託に至るまでの間の森林においては、市町村が経営管理を行なう

 要するにこの法案による新たな森林管理制度では、所有者が管理できない森林について、管理する権利を市町村に設定し、市町村は採算ベースに乗りそうな森林は「意欲と能力のある林業経営者」に管理を委託し、採算ベースに乗らない森林は市町村自らが管理するというもので、4月19日の衆議院本会議で可決された(本法を市町村が運用するに当たって、「森林の多面的機能の発揮」「公益的機能の発揮」「生物多様性の保全」について、十分に配慮するよう助言等の支援を行なうこと、自伐林家等が実施する森林管理や森林資源の利用の取り組み等に対し、さらなる支援を行なうことなど、異例の14項目の付帯決議つき)。本稿執筆時の5月末段階では参議院でも可決される見込みだ。

 この法案の問題点はいくつもあるが、衆議院農林水産委員会の参考人質疑で泉英二・愛媛大学農学部名誉教授(森林学/森林・林業政策)は、「この法案は、究極的には、川下の大型化した木材産業およびバイオマス発電施設への原木の安価な大量安定供給が目的としか思いようがない」と断言し、「この法案はいったん廃案とするのが望ましい」と反対意見を述べた。

 また法案が「経営管理権」としているのは「立木の伐採及び木材の販売、造林並びに保育等を行うための権利」であり、伐採については50年生程度での主伐(皆伐)であることは以下の沖修司林野庁長官の発言からも明らかだ。

「個人が所有する私有林の林家数は83万戸あると言われていますが、その9割が10ha未満の小規模所有が占めています。残念ながら今の時代、木材価格が安い。零細な所有者ほど自分たちで伐採、植林しようという意欲が湧きにくいのが現実です。人工林の半分が数年すると『51年生』以上になります。成長した木は、主伐が必要となります。今までは間伐で森を育てる段階でしたが、主伐は大量に切って利用していく段階。小規模な所有が多いと、切った後造林が必要となる主伐が採算性の問題などから行われず、林業が回っていかなくなります」(2018年1月13日日刊工業新聞・ニュースイッチ)

「違憲」の疑いすらある「森林経営管理法案」

 さらに法案の国会提出の際の背景説明資料には、(1)「我が国の森林の所有形態は零細であり、8割の森林所有者は森林経営の意欲が低い」(2)「意欲の低い森林所有者のうち7割の森林所有者は主伐の意向すらない」との文言があり、まるで「主伐」が森林経営の意欲の高さを表すかのような表現となっている。また、「8割」「7割」の根拠となった2015年の林野庁「森林資源の循環利用に関する意識・意向調査」で、72%の林業者が経営規模について「現状を維持したい」、7%が「規模を縮小したい」と回答していたのを「意欲が低い」と丸めて表記していたため、「データねつ造ではないか」「恣意的表現だ」との批判が広がり、林野庁は法案が衆議院を通過した後に(1)「我が国の森林の所有形態は零細であるが、85%の森林所有者は経営規模の拡大への意欲は低い」(2)「60%の森林所有者は、伐期に達した山林はあるが今後5年間は主伐の予定がないとしている」と修正した。

 このことについて、泉名誉教授は次のように述べている。

「この法案の根本には、森林所有者は、林業経営をする意欲がない人たちと規定していることがある。一方で、森林所有者には伐採と、その後の造林の実施に責任を持つよう定めている。できない場合は市町村に委託させる内容になっているが、委託に同意しない所有者に対しては、市町村が勧告や意見書提出などのプロセスを経れば『同意したもの』とみなし、木を伐採してもいいことになっている。非常に強権的な内容で、憲法が保障する財産権を侵害している可能性が高い」(4月23日AERAdot.)

 法案では、所有者不明の森林については、計画を公告して6カ月以内に異議がなければ、計画に同意したとみなし、市町村が管理できる規定もある。一度市町村に渡された管理権は、最大50年続く。また、「災害等防止措置命令」の制度を新設し、市町村は森林所有者に伐採などを命じることもできる。他の法律には見られない強大な権限を地方自治体に持たせる法案であり、違憲の可能性も高いのだ。

小規模森林所有者は「意欲がない」のか

 それでは本当に「零細な森林所有者」は森林への関心を失っているのだろうか。冒頭で紹介した海老原さんはじめ「宮崎県盗伐被害者の会」の人びとは、たとえ森林の近くに住んでいなくても、木の成長を楽しみにしていた人ばかりである。また『季刊地域』33号でNPO法人自伐型林業推進協会(自伐協)の上垣喜寛事務局長は、上記林野庁の2015年調査から次のように指摘する。

「アンケートよると、森林の手入れ状況について『十分に手入れをしている』(13.9%)と『十分ではないものの、必要最低限の手入れはしていると思う』(47.5%)と、合わせて約6割が各自で手入れをしている。『森林に対して興味がない』という選択肢を選んだのは、わずか数人であり、『意欲がない』といえるデータとはいえない」

 国から「意欲がない」と切り捨てられた小規模森林所有者が集まり、2014年に結成されたのが自伐協だ。

「『自伐型林業』とは、短期的な生産量を追い求める大規模林業と違い、間伐を何度も重ねて森林資源の蓄積量(在庫)を増やし、長期視点で持続的森林経営を目指す。いつでも山に入れるような壊れない道を高密に張り巡らせることで、木材の搬出コストを抑え、低投資・低コストの林業を実現。現状の材価でも手元に収入が残る林業として注目されるようになってきた」(同右)

 2015年林野庁調査でも伐期に達した山林はあるが今後5年間に主伐を実施する予定はないと回答した人(60%)に、主伐を実施しない理由について尋ねたところ、「主伐を行なわず、間伐を繰り返す予定であるため」という回答の割合が58.0%ともっとも高くなっている。

 また自伐協の中嶋健造代表理事は、自身のフェイスブックで「林業には適正規模があり、規模拡大のみを経営意欲の表れとみる林野庁の認識はおかしい」と批判する。

「森林経営には適正規模があるのです。とくに長期的な多間伐施業を実施する自伐型林業者では、1人あたり50ha前後が適正規模です。親子2世帯や2人単位で実施する場合が多いですが、この場合は100ha前後が適正規模となります。この経営規模を維持しながら、ha(面積)あたりの蓄積量と材質を上げていく、生産しながら蓄積量と質を上げていくということが森林経営の極意で、経営レベル向上が重要となります。規模を拡大することはかえって経営レベルを落としてしまうことになりかねません」

 では「森林経営管理法案」における「意欲と能力のある林業経営者」とはどういうものか。じつは法案では、ほぼ木材の伐採・搬出のみを行なってきた「素材生産業者」をはじめて「林業経営者」と位置づけ、あらゆる施策と資金を集中して林業の担い手として育成しようとしている。林野庁は法案成立に先立つ今年2月に「林業経営体の育成について」という長官通知を各都道府県知事あてに出し、「意欲と能力のある林業経営体」の選定を求めたが、宮崎県で選定された25の経営体の中には、盗伐・誤伐の疑いをかけられている二つの経営体が含まれているという。

「小さい林業」の「意欲と能力」こそ評価せよ

 昨年末、この「森林経営管理法案」とセットになる「税制改革大綱」が閣議決定された。2014年度から個人住民税に1人一律1000円を上乗せする「森林環境税」だ。約6200万人の納税者が対象となり、その総額約620億円(1割を都道府県、9割を市町村に按分)。沖長官は「毎年、森林整備に約1200億円を補助していますが、それでも年500〜600億円足りず、補正予算で数百億円を追加している状況です。新税の税収600億円で、毎年の不足分を補える計算です。補助金は今まで通り、収支トントンとなる森林の整備に使い、新税は採算ベースにのらない森林の手入れから使います」(前掲日刊工業新聞・ニュースイッチ)と述べているが、「森林経営管理法案」がめざす森林行政のもとでは、補助金と新税で全国の山がはげ山と化してしまうのではないか。「森林環境税」が「森林破壊税」になってしまっては大問題だ。

 じつはこの森林環境税、「森づくり県民税」などの名前ですでに37の府県で導入されており(国の新税は二重課税との指摘もある)、『季刊地域』33号には「地方版・森林環境税の活かし方」緊急アンケートの結果が掲載されている(33府県が回答)。たとえば2003年に全国でもっとも早く1人500円の森林環境税を導入した高知県では、徴収した税金を単年度で使い切ることによる無駄遣いを防ぎ、県民参加と透明性の向上を図るため「森林環境保全基金」を創設。税収の約1億7000万円は基金として積み立てられ、第三者機関の「基金運営委員会」での議論を経て、森林環境を保全する事業に充てられている。また、「小さい林業」の支援では、森林環境税とは別に、2013年度から「自伐林家等支援事業費補助金交付」を県単事業で導入。搬出間伐18万3000円/ha、2.5m 幅の作業道敷設1000円/mなどを助成している。

 同県小規模林業推進協議会の副会長で、四万十市で自伐型林業を始めて6年目の宮?聖さん(39歳)は、「短期的な木材増産のための皆伐や過間伐、再造林に多くの補助金を使うよりも、高知県のように個人の小さな森林所有者に平等に支援をすれば、林業従事者も増え、長期的な木材増産も可能になります」と話している。

 農文協が昨年9月に発行した『小さい林業で稼ぐコツ』は版を重ね、「山で稼ぐ 小さい林業ここにあり」を特集した『季刊地域』32号も売れ行き好調だ。林野庁は主伐と経営規模の拡大だけで「意欲と能力」を評価するのではなく、持続可能でかつ環境保全型の「小さい林業」の「意欲と能力」をこそ評価すべきではないか。


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