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月刊「現代農業」/2017/7/4 12:10
http://www.ruralnet.or.jp/syutyo/2017/201708.htm

農村力発見!/——『季刊地域』の用語集より

 目次
◆力をもらえた59の用語たち
◆農村力発見(1)地域資源にあふれている
◆農村力発見(2)地エネを生み出す力もある
◆農村力発見(3)農が基盤、農家が基盤
◆農村力発見(4)自給力 —何でもつくる、みんなでつくる
◆農村力発見(5)自治力 —愛するむらは放っておけない

 本誌の兄弟誌『季刊地域』が、7月発売の夏号で第30号を迎える。前身の『増刊現代農業』を引き継ぐ形で2010年春に創刊以来、春夏秋冬季節ごとに1号ずつ発行を重ねてきた。これまではA4サイズの大判雑誌だったが、30号を機に少し小型化。ページ数も増やし、気軽に読めて持ち歩きにも便利な大学ノートサイズにリニューアルする。

 30号は特別編成になっていて、特集は「赤トンボとホタルの増やし方、そしてミツバチについて」。これについては283ページからの編集局ニュースでも紹介したので、ここではもう一つの大型特集、30号記念企画「農村力発見事典——『季刊地域』の用語集59ワード」に込めた思いを書いてみたい。

力をもらえた59の用語たち

『現代農業』はよく「農家力を根源とする雑誌」と表現される。それに比すと『季刊地域』は「農家力とともに、農村力をも根源とする雑誌」となる。だから、今回の企画は「農村力発見事典」。農村力は農村にもともと備わっているもので、わざわざ「発見!」するものではないのかもしれないが、当たり前すぎるとかえって忘れてしまっていたりもする。だからこそ、気づくとそれだけで元気になれたりしないだろうか。

 事典の冒頭、リード部分にはこう記した。

 2010年春の創刊号から、おかげさまで『季刊地域』は30号。激動の7年半の間には、震災・原発事故やTPP、飽くなき規制改革と農家減らしの圧力……と、大変なことが次々起き、試行錯誤の連続でした。

 でも、道に迷いそうになったとき、立ち返るのはいつも現場=農村。その力に依拠すれば、急に視野が広くなり、励まされ、力がわいてくる。そんな思いを何度もしました。そのことを具体的なキーワードで表現したいと考えたのが今回の企画「農村力発見事典」です。『季刊地域』のエキスがたっぷり詰まった用語集、お楽しみください。

 全体は以下の5部構成。

(1)地域資源にあふれている
 荒れ地だって活かせば宝/山の恵みは無限大/じつは活かせるインフラも豊富/見えない宝はもっとある

(2)地エネを生み出す力もある

(3)農が基盤、農家が基盤
 「小さい農家がたくさん」が強い/助け合って続けていく

(4)自給力——何でもつくる、みんなでつくる

(5)自治力——愛するむらは放っておけない
 困りごとから「むらの仕事」へ/人を増やす、増えていく

 この分類で収録した59の用語はすべて、これまでの『季刊地域』の記事でテーマになってきたものから選んだ。各用語の解説は、長短あるが約1000字ほど。ここではまるまる引用するわけにもいかないのでほんの一部ずつになってしまうが、コーナーごとにどんな用語が収録されているのか、少し紹介してみよう。

農村力発見(1)地域資源にあふれている

▼荒れ地だって活かせば宝

「何もないように見える農村にこそ、活かせる資源が無限にある」と気づくことは、何よりも力になる。この第1コーナーでは、そういう地域資源に関する用語を18ワード取り上げた。

 最初に登場する用語は「カヤ」だ。「カヤ」という言葉が指す植物は、人によって地域によって違うのだが……。

 茅葺き屋根によく使われてきた草のことを、総称で「カヤ(茅・萱)」と呼ぶ。乾地に生えるススキと湿地を好むヨシとがその代表格だが、チガヤやオギ、カリヤス、スゲなどもすべて「カヤ」。かつては屋根材のほか、田畑の肥料、牛馬のエサとして、農村ではなくてはならない草たちだった。カヤ場はたいがい入会地で、草山の維持に欠かせぬ春先の野焼きは、集落総出の一大仕事だった。

 といった調子で解説が始まる。このあと、日本の家の屋根が茅葺きからトタンや瓦に代わるにつれてカヤの需要が減り、高度経済成長期には集落のカヤ場がスキー場やゴルフ場に次々変わっていったこと。だが時を経て今、カヤ不足が深刻化し、文化財や古民家修復にも困る事態が起きていること。それに目を付けた福井県のある農村が、耕作放棄地にカヤを栽培して売るようになったこと。そのほかカヤの農業利用、そして昨今は燃料作物としても熱い視線を浴びていること……などが紹介されている。

 今や、荒れ地の代名詞のようになってしまったカヤだが、地域資源の一つと見れば、全然違った多様な話が展開される。

耕作放棄地」という用語もある。これは定義としては、5年に1度の農林業センサス調査で所有者自身が「作付けする考えがない」と回答した農地のこと。似たような言葉に「遊休農地」や「荒廃農地」があるが、こちらは農業委員会の調査・判定によるもの、と解説されている。

 耕作放棄地にはどうしてもマイナスイメージがあるが、

 だが近年、「むらで新しくおもしろいこと始めたよ」という話を聞いていくと、たいがい耕作放棄地が舞台になっている。耕作放棄地を、地域のなかで新しく何かを作付けたり、むらの祭りや楽しみごとを仕掛けたりできる「余地」だと積極的に考えてみると見方も変わる。

として、耕作放棄地をむらの「潜在能力」と捉えることを提案している。ナタネやヒマワリを育てて「地あぶら」を搾ったり、ヒツジやヤギなどの「草刈り動物」を放牧したり、いろんなことができる、やっている人たちがいる、ということのあとに、最後、

 もともと荒れていた土地なのだから、ものすごく儲けようと肩肘張る必要はない。柔軟な発想でまずは挑戦。そんな気軽さでつきあえるのも、耕作放棄地のいいところだ。

と結んでいる。

▼山の恵みは無限大

」関係の用語も、地域資源コーナーに収録した。というのも、山林を所有している農家林家は多数いるはずなのに、普段はそのことを忘れている人が多いからだ。「山の木は切ってもカネにならない」「出すだけ赤字」という意識が強固にあって、ほとんどの人が持ち山を「見て見ぬふり」している。

 だが昨今、「そうでもないよ」「やりようによっては山もイケる」という人たちが徐々に出てきて、『季刊地域』では何度も記事に取り上げてきた。具体的な用語としては、「」そのもののほか、「山の境界線」「自伐林家・自伐型林業」「」「木の駅」「山の多面的交付金」を解説。さらにイノシシやシカなど山の獣の恵みの用語として「皮・角・肉利用」「皮なめし」も収録した。

 日本の国土の3分の2が森林。これまで「ないもの」と意識の外に追いやっていた山を、「使える面積」にカウントできれば、「わが地域」はうんと広く深くなると思うのだが、どうだろう。

▼じつは、活かせるインフラも豊富

 続いて地域資源のコーナーには、「空き家」「廃校」「廃JA支所」「地元学」「地元出身者」「田舎の墓」などという異色の用語が並ぶ。人が減り、市町村合併や合理化などが進む中で不要とされたインフラを、地域資源と見て活かす発想だ。廃JA支所は、各地で住民運営の「むらの店」に生まれ変わっており、地域再生に非常に重要な役割を担っている。長野県飯田市では、みんなが集える赤提灯居酒屋に変身。最高の盛り上がりを見せている。

農村力発見(2)地エネを生み出す力もある

 第2コーナーは「地エネ」の用語解説から始まる。

 電力にしろ熱エネルギーにしろ自然の力を利用して生み出そうとする限り、その主な舞台は農山村となる。食糧生産と同じくらい、エネルギー生産は農山村の得意技なはずだ。だが現在、農山村での発電事業に資本投下して参入しているのは、地元出自でない都会の企業がほとんど。太陽光パネルが一面敷き詰められ風景を一変させているにもかかわらず、地元には売電収入はほとんど入らず、せいぜい土地の賃料がわずかに入るだけ。

 そんななか、せっかくの農山村のポテンシャルを地元でこそ活かしていこうという動きが、小さいながらも各地で起こっている。農業用水路での小水力発電、田んぼの法面での太陽光発電、間伐材やモミガラ利用のバイオマス発電などは、まさに農村力発電。里山の木を切って薪を生産し、地域の熱エネ供給に一肌脱ぐ動きも盛んになってきた。「地エネ」とは、地元のエネルギー、地方分散型エネルギー、地産地消エネルギー、そして「地に足のついたエネルギー」の思いを込めた『季刊地域』の造語である。

 続いて、農家読者に一番人気のある「小水力発電」について用語解説したあと、「小さい木質バイオマス発電」「電気自動車(EV)」「廃油」「薪ストーブ」などなどの用語へ展開していく。薪ストーブの項目では、2次燃焼(完全燃焼)するストーブのしくみも図解で掲載。

農村力発見(3)農が基盤、農家が基盤

 農村はなぜ強いか?という問いには、やはり「そこに農家がいるからだ」と答えたい。「農家を減らさない」という方向性は『季刊地域』が一番大事にしてきたことであり、第3コーナー全体から、「農家減らしの圧力との農村なりのたたかい方」が伝わればと思う。

 最初の用語は「小農」だ。

 小農の対義語には大農がある。字面から見れば、小農は小規模な農業、大農は大規模な農業と見えるが、ことはそれほど単純ではない。(中略)農家、農業、むらの本質を問い続けた守田志郎は、小農か大農かは面積の大小ではなく、生活と生産が一体となった暮らしの中に小農らしさがあると主張した。

 次の用語は「小農の使命」。自称「小農」「チマチマ百姓」の福島県・東山広幸さんは、生産と暮らしが一体となった経営なのでリスクに強く、「それほど儲からない代わりに、急に家計が苦しくなることもないのが小農」という。

 だが今、そんな東山さんにとっての一番の脅威は、まわりの農家の減少だという。耕作放棄地が増えるとイノシシが増えて畑に被害が出る。水路など、みんなで守る中山間地のインフラがダメになると米づくりができなくなる……。小農が小農として生きていくには、むらがむらとして機能していなくてはならないのだ。

 だから、地域で生きる小農の使命は「むらに農家を増やすこと」となる。

 さらに続けて、次の用語は「」だ。

 米は地域経済の基本である。かつて米の概算金が2万円を超えていた頃、農家は隣の家と競うように農機を新調するという話がよく聞かれた。兼業農家の各家が勤め先の収入までつぎ込んでトラクタからコンバインまで買い揃えることはムダの象徴のようにいわれたが、余計なお世話だ。農家が地元の農機店や農協から機械を買い、地元の居酒屋に飲みに行くことで、地域経済が回っていた。

人・農地プラン」や「企業参入」などの用語も、このコーナーに収録している。農地中間管理機構の狙いと、実際のむらや参入企業の動きがずれていること、安倍政権や規制改革会議らが次々繰り出す「農家減らしの圧力」を、実際の農村はうまくかわしながら自分たちのペースでむらを守ろうと動いていること、などが出てくる。

集落営農」「中山間直接支払」「多面的機能支払」などの用語では、農業を続けていくための助け合いが、集落の共同の力を高めていく様子が描かれている。そのほか「草刈り隊」「草刈り動物」「獣害柵の見回り」「」「飼料米」なども、この農の第3コーナーに収録。

農村力発見(4)自給力
—何でもつくる、みんなでつくる

 農家力の根源は、自給力。だから、農村力の根源も、自給力。農家が集まってできた農村には、自給の精神と技が染みついている。

 むらの中の工事も自分たちでやる、ということで、第4コーナーの用語は「農家の土木」で始まる。

石積み」「地あぶら」「パン力・ピザ力」など、ちょっと変わった自給や6次産業化のラインナップのあと、『季刊地域』ならではの用語「ほろ酔い自給圏」「地域経済だだ漏れバケツ」などが出てくる。ようするに、農村の自給力こそが、地域経済をうまく回していくカギになることを、ここでは表現したかったのだ。

地域経済だだ漏れバケツ」の解説は以下のようだ。

 地域経済がなぜなかなか立ち行かないかを考えると、ひとつには、せっかく稼いだおカネが地域内で使われずに、地域の外に出て行ってしまうからである。地域経済をバケツに見立てれば、給料や年金、補助金などの形でバケツに注ぎ込まれた水(おカネ)が、外食費や電気代、ガス代、灯油代、ガソリン代といった燃料費、通信費、酒代などの形で「だだ漏れ」しているのが現状だ。(中略)

 この「だだ漏れバケツ」の穴をふさぎ、域内調達率を高めることで、新しい仕事を生み出すことができるはずだ。なかでも電気代、燃料代、パン代、酒代といった穴の大きな(域外調達率が高い)品目ほど、取り戻す余地が大きく、狙いめといえる。電気をすべて大手電力会社から買うのではなく、小水力発電や太陽光発電でまかなう、燃料を灯油ではなく、薪に置き替える。地元のブドウを使ったワイナリーを興すといった具合である。

 酒代の穴をふさごうと企画した『季刊地域』の特集が「ほろ酔い自給圏構想」(23号)だった。バケツの穴ふさぎは、焦らず一つ一つ地道に、しかも楽しくやっていきたい。自給力を根源に備えている農村なら、きっとできるはずだ。


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