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学校と地域が役割を認識して力を合わせ、未来の担い手である子供たちのために最適な教育環境をつくり出していくことが重要だ。 県教委が「地域学校活性化推進構想」案をまとめた。「頑張る学校応援プラン」の主要施策の一つである「地域と共にある学校」の取り組みとして本年度中に構想を策定し、新年度から地域と連携した学校教育を強化していく。 構想は、これまでのように地域が学校や子供たちを支援する一方向の関係ではなく、学校も地域に貢献する双方向の活動を通じて、地域と学校が強いきずなをつくり上げることを柱とする。 学校と地域を巡っては、国の新しい学習指導要領も「社会に開かれた教育」を掲げ、地域とのふれあいを求めている。学校と地域が互いに連携、協力し合うことで、学校教育の充実と、地域の活性化に相乗効果を生み出したい。 構想によると、県教委は新年度から、公立の全ての小中学校、高校、特別支援学校に、地域との窓口となる「地域連携担当職員」を1人ずつ配置する。 担当職員は、地域と学校が行う協働活動の学校側の窓口の役割を担う。地域側の窓口となる人々と協力し、活動の調整や情報発信に取り組む。活動を円滑に進めるためには欠かせない存在であり、有効に機能するよう期待したい。 活動の充実を図るために「地域学校協働本部」の設置も盛り込まれた。県本部を教育庁、地域本部を教育事務所、市町村本部を市町村教委などに設ける。 高校では新年度から「総合的な探求の時間」が設けられ、探求する能力を育む学習が始まる。復興や人口減少など地域が抱える課題の解決もテーマに想定される。 地域の人々と交わりながら、自ら解決策を探っていく学習は、生徒にとって生きた学習であり、地域の活性化にもつながるだろう。協働本部が、学校と地域の企業や団体などとの調整役を十分に果たしていくことができるような体制にすることが求められる。 わが国では少子化や核家族化などが進み、子供たちを取り巻く人間関係の希薄化が指摘されている。本県ではさらに東日本大震災と原発事故の影響も懸念される。増えるいじめや虐待なども直面する大きな課題である。 子供たちの人間形成は、学校だけでなく家庭や地域社会との連携の中で行われる。新しい時代にふさわしい資質や能力を育むために、地域も大きな役割を担っていることを改めて認識し、協力し合うことが大切だ。
廃炉作業の最難関である溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しに向けた重要な一歩と言える。 東京電力が福島第1原発2号機で、原子炉格納容器内のデブリに触れて、硬さなどを確かめる調査を行った。先端で物をつかめるようになっている遠隔装置で調べたところ、1~8センチの小石状のデブリを挟んで持ち上げることに成功した。一定の硬さがあり、接触によって崩れたり変形したりすることはなかったという。 デブリに触れて、状態を把握することができたのは今回が初めてで、廃炉作業を進めていく上での大きな節目となる。原発事故による炉心溶融で1~3号機の内部には大量のデブリが残る。得られたデータの分析などに努め、廃炉への道筋を明確に付けていかなければならない。 政府と東電は、2019年度後半に小さなデブリを試験的に原子炉格納容器の外部に取り出し、どのような性質を持っているのかなどを調べる―という計画を立てている。今回の調査は、その準備段階にあたり、格納容器にある小石状のデブリをつかみ、外部に運び出すことが技術的に成り立つ証明ができたと言える。 しかし、実際に外部に運び出すためには、デブリから出る高い放射線を遮ることができる保管容器の開発など課題は多い。試験的な取り出しを経て、21年に本格的なデブリ取り出しに入るというさらなる段階に進むことができるよう力を尽くし、立ちはだかる課題を乗り越えてもらいたい。 今回の調査では、小石状とは異なる粘土のような形のデブリについては、移動させることができなかった。東電や国際廃炉研究開発機構(IRID)によれば、格納容器内には小石や粘土のような形のほかに、大きな塊となったデブリや、格納容器の底で層状に固まったデブリもあるとされる。 さまざまな構造物と混ざりあったデブリは、2号機だけでも約237トン、1~3号機の合計で約880トンとの推計もある。デブリを取り出すためには、大きなデブリを運ぶ遠隔装置やデブリを切断する工具の開発などを先取りで準備しておく必要もある。 原発事故の発生から間もなく8年。今回、初めてデブリに接触できたものの内部の状況はまだ詳しく分かっていないのが現実である。本県の復興は、第1原発の廃炉が完了してこそ成し遂げられることを、政府と東電は改めて再認識し、困難な道のりを切り開いていくために国内外の英知を結集しなければならない。
今も、どこかで、子どもたちが助けを求めている。小さな命を守るために、全ての関係機関が危機感を持って、複層的な対策を打ち出していくことが重要だ。 児童虐待の増加が止まらない。県警が昨年、虐待を受けた疑いがあるとして県内4カ所の児童相談所(児相)に通告した18歳未満の子どもの数は過去最多の833人(前年比187人増)に上った。 増加の背景には、配偶者への暴力で子どもがストレスを受ける「面前DV」を心理的虐待と捉えて、警察が児相への通告を徹底していることも挙げられるが、子どもたちを取り巻く状況が深刻であることに変わりはない。 千葉県野田市では痛ましい事件が起きたばかりだ。小学4年女児が自宅で死亡し、傷害容疑で両親が逮捕された。児相や市教委の不適切な対応が重なったことが事件につながったと指摘されている。 県内において、子どもたちを守る体制は十分なのか。悲しい出来事を繰り返さないために再点検するべきだ。 政府は、千葉県での事件を受けて、虐待防止の緊急対策をまとめた。1カ月以内に全ての虐待事案の緊急安全確認を行うほか、通告元の情報を提供しない新ルールや児相の体制強化を加速させる。 緊急安全確認は、児相が在宅指導している事案が対象で、県によると県内では現時点で500件強あるという。県には、学校や市町村教委などと協力し合い、子どもたちの身に危険が差し迫っているようなことはないのか、迅速かつ丁寧に確認するよう求めたい。 国は、2016年の児童福祉法改正で、子どもがいる家庭の悩みの相談などに当たる「子ども家庭総合支援拠点」を22年度までに設置するよう全市町村に求めた。 支援拠点は、虐待の情報収集に加えて、児相や福祉機関との連絡など調整業務を担う。住民に身近な市町村が、問題のある家庭を見守り、緊急性のある事案が発生した場合は児相が集中して取り組むといった効果が期待できる。 しかし、支援拠点の設置は努力義務ということもあり、県内での設置は数えるほどしか進んでいないのが現実だ。各市町村は支援拠点の必要性を理解し、整備に向けた取り組みを急ぐべきだ。 県警は新年度から児相に警察官や少年警察補導員を出向させ、児童の速やかな保護など安全確保の充実を図る。児相と警察がより密接に連携し、互いのノウハウや情報を共有することで、迅速な初期対応にあたり、早期解決につなげてもらいたい。
伝統の重さをかみしめながら、大切な文化財を守り、活用していくことが求められる。 喜多方市と会津美里町に伝わる「会津の御田植祭( お た うえまつり)」が国の重要無形民俗文化財に、伊達市が所有する「蚕種(さんしゅ)製造及び養蚕・製糸関連用具」が重要有形民俗文化財に、それぞれ指定される。国の文化審議会が文部科学相に答申した。 県内での「無形」指定は11年ぶりで9件目、「有形」指定は8年ぶりで8件目。御田植祭は2015年に「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に選ばれていた。先人たちが残してくれた遺産は古里の宝だ。後世に引き継ぐ努力を続けていきたい。 御田植祭は、喜多方市の慶徳稲荷神社と会津美里町の伊佐須美神社で毎年7月に、それぞれ行われている。慶徳稲荷神社は室町時代、伊佐須美神社は江戸時代から継承されてきたとされる。 行事では、神社の神田で早乙女が田植え歌に合わせて儀礼的な田植えを行う。どちらも子どもたちが重要な役割を果たしており、喜多方ではキツネの面を持った子どもたちが神田に苗を投げ入れ、会津美里では獅子頭を持った子どもたちがみこし行列に加わる。早乙女を務めるのも子どもたちだ。 田植え行事は西日本を中心に広く行われ、会津にもいくつかあったがほとんどが衰退、喜多方と会津美里は伝統的な形を引き継ぐ典型とされる。近世以前から伝わる田植え行事としては全国の北限に位置するという特色もある。 少子化の進行による担い手不足が将来的に心配されるが、会津美里では昨年から町内の全小中学校と高校が参加するなど継承への取り組みも進む。指定を契機に、より多くの人たちが地域の文化や歴史を再認識し、伝承に弾みがつくことを期待したい。 伊達市には、蚕の卵から作る蚕種製造用具など5千点近くが保管されている。指定されるのはこのうちの状態が良い1344点。日本の蚕糸業の変遷を理解し、東北での蚕種製造の地域的な広がりを知る上で重要だと評価された。 伊達地方は養蚕業が盛んで、蚕種の製造や養蚕、製糸の技術が発達した。江戸幕府からは「蚕種本場(さんたねほんば)」を名乗ることを許されるなど一大産地として栄え、日本の養蚕業をけん引した。伊達市は情報発信の一つとして、7月にも市保原歴史文化資料館で養蚕業をテーマに企画展を開く予定だ。 文化財保護法は保存だけでなく活用もうたう。有形、無形を問わず地域づくりや観光などに役立ててこそ古里の宝の輝きが増す。
将来を担う子どもたちの能力や可能性を伸ばすことができるよう「生徒第一」の理念にかなう教育環境を整えることが重要だ。 県教委が2019年度から23年度までの5年間にわたって行う県立高校改革の方向性を定めた実施計画をまとめた。進行する少子化を見据えた学校の統合・再編と、各校に求められる教育内容の明確化などを柱とする。 統合・再編では、23年度までに25校を13校に統合し、分校2校で募集を停止するとした。現在96校ある県立高校は、再編によって81校になる。 再編は1学年3学級以下の高校のうち、志願者が減少傾向にある学校を対象とした。県教委は再編により原則4学級以上にすることで、生徒たちが切磋琢磨(せっさたくま)したり、多様な部活に参加したりすることができる環境にしたい考えだ。 再編される各高校はこれまで、それぞれに特色ある教育を行い、伝統を築いてきた。再編に当たっては、単に数合わせの統合に終わらせることなく、各校が持っている特色をかけ合わせることで教育の質を相乗的に高めていくことが不可欠だ。生徒や保護者の視点に立って、魅力ある学校像を描いてもらいたい。 県教委は4月以降、各校で生徒や保護者、同窓会員、地域住民らに対する説明会を開く。 地元から高校がなくなることについて不安の声もある。県教委は、学校関係者や住民に再編の内容や意義について丁寧に説明し、引き続き教育活動にさまざまな面で協力してもらえるよう理解を求めていくことが大切だ。 もう一つの柱は、全日制高校の役割を五つに分類したことだ。各校を「進学指導拠点校」「進学指導重点校」「キャリア指導推進校」「職業教育推進校」「地域協働推進校」のいずれかに位置付けて教育の方向性を明確化し、進学指導や職業教育などの充実を目指す。 高校時代は、生徒たちが将来どのような道に進むかといった課題と向き合い、進学や就職の岐路に立つ大切な時期だ。特にこれからの社会は、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)の発展、グローバル化の進行などにより大きく変化していくことが予想されており、時代に対応できる人材育成が大きな課題となる。 改革を契機に各高校は、これまで実践してきた教育内容のさらなる充実を図り、学校の魅力を高めていくことが必要だ。その積み重ねが生徒たちの将来に資する教育の実現と、県全体の教育力の底上げにつながる。
被災地の思いに向き合っているかどうか絶えず自問自答して施策を磨き上げ、復興を前に進めていく組織でなければならない。 復興庁があすで発足から丸7年を迎える。同庁は、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興政策を推進する政府機関として、2012年2月10日に発足した。他の省庁とは異なり設置期間が法的に定められており、政府の復興期間(11~20年度)の終了に合わせ、21年3月末に廃止することが決まっている。 復興期間は残り2年余りになったが、被災地の復興はまだ道半ばというのが現状だ。このため、政府は、同庁に代わって21年4月以降の復興政策を担当する後継組織の在り方の議論を進めている。渡辺博道復興相は、本年度中には一定の方向性を出す考えを示しているものの、どこまで踏み込んだ内容になるかは見通せない状況だ。 県内の被災自治体からは「国の今後の関わり方がはっきりしないことには、将来を見据えた対策を講じることができない」との声が上がっている。政府には、本県が直面する原子力災害からの復興に最後まで責任を持ち、着実に地域再生を実現していくことができる「ポスト復興庁」の具体像を一日も早く提示することを求めたい。 政府は、10年間の復興期間で行う対策の財源として32兆円を確保した。このうち、19年度当初予算案に計上した事業を含めるとすでに30.2兆円の使い道が決まっている。最終年度の20年度に使える財源は約1.8兆円となり、復興期間は時間的にも、財源的にも「終わり」が見えてきた状況だ。 一方、原発事故で帰還困難区域に指定された地域は、住民を迎えるための復興拠点の整備に着手し、復興のスタートラインに立ったばかりだ。同庁の職員には、常に被災地の立場で考える意識を持ち、限られた時間と財源の中でも柔軟に課題解決の道を探り続けることが欠かせない。 同庁は本来、被災自治体からの要望を一元的に受け付け、実現に向けて省庁間を調整するワンストップ機能を持った「復興の司令塔」としての役割が期待されてきた。しかし被災自治体は今も、それぞれの省庁への要望を続けている。本来果たすべき役割を全うしているかどうか、原点に立ち戻ることが必要だ。 福島復興再生特別措置法では、本県の原子力災害からの復興について、国の責任で行うべきと明記している。その責任は行動で示されなければならないことを政府は改めて銘記すべきだ。
社会全体で高齢者を見守り、家族を支える仕組みを充実させることで虐待をなくしていきたい。 県がまとめた2017年度の高齢者の虐待に関する通報・届け出件数によると、家族や親族らによる事案は435件で、前年度より46件増加し、06年度の統計開始以来、最多となった。このうち県が実際に虐待と判断したのは260件で、13年度の261件に次いで過去2番目に多かった。 件数の増加について県は、高齢者虐待に対する認知度が高まっていることを挙げているが、今後も高齢化の進行とともに虐待が増えていくことが懸念される。県や市町村、福祉関係機関などは、虐待が起こる要因を詳しく分析し、未然防止に向けた対策を強化しなければならない。 虐待と判断された内容(重複あり)をみると暴力や外部との接触を遮断するなどの身体的虐待が174件と最多で、嫌がらせなどの心理的虐待(102件)、介護の放棄(60件)、本人の合意なしに金銭を使うなどの経済的虐待(57件)が続いた。虐待に遭った人のうち7割超が介護保険の認定者だった。 家族や親族による虐待について県は、介護疲れやストレスのほか、周囲に相談したり協力をしてもらえる人がいないことなどが背景にあるとみている。 虐待の中には、デイサービスやショートステイなど介護サービスを上手に利用していれば、未然に防げたとみられるケースもある。 高齢者を支える拠点として各市町村が設置している地域包括支援センターは、虐待を防ぐための総合的な窓口にもなっている。一人で悩みを抱え込まず専門家のアドバイスを受けることが大切だ。 介護関係者や民生委員には、虐待を受けている高齢者や、介護に悩む家族のサインにいち早く気付き、センターや行政につなぐことが求められる。地域社会も高齢者がいる家庭への声掛けなどを通して、高齢者や介護者を孤立させない取り組みを進める必要がある。 介護施設の職員などによる虐待の通報・届け出件数は11件で、前年度に比べて5件減った。このうち実際に虐待と判断されたのは前年度と同数の4件だった。入所者の体を拘束したり、勝手に金を使ったりするなどの事案があった。 県や関係機関は、事業者への指導監督を徹底するとともに、研修を通して職員の資質向上を図るなど対策を講じて、介護の現場から虐待を根絶しなければならない。 「人生100年時代」である。誰もが安心して老いることができる社会づくりに力を合わせたい。
大台超えを契機にして、外国人旅行者の誘客に弾みをつけたい。 東北運輸局がまとめた2018年1~11月の東北6県の外国人延べ宿泊者数は112万1210人となり、07年の調査開始以来、初めて100万人を超えた。本県も震災後初めて10万人を突破した。従業員10人以上の施設に泊まった外国人の人数を集計した。 政府は、東日本大震災と原発事故から5年の16年を「東北観光復興元年」と位置付け、20年には東北への外国人旅行者を150万人に増やす目標を掲げ、誘客に取り組んでいる。各県が強みを生かし合うことで相乗効果を上げ、確実に目標を達成したい。 東北運輸局は、各県や観光関係者のプロモーション活動が成果を上げていることに加えて、桜や紅葉のシーズンだけでなく、夏場に訪れる客も増えていることが数字を押し上げているとみている。 国・地域別では、台湾が全体の3割を占め最も多いが、タイやシンガポールなど東南アジア各国の増加が際立つ。東北を訪れる旅行者は、東京や京都などのゴールデンルートを訪問済みのリピーターが多いのが特徴だ。日本への旅行が2度目、3度目という旅行者も楽しむことができる旅のメニューを用意することが必要だ。 外国人旅行者の誘客には全国の自治体がしのぎを削る。100万人を超えたとはいえ、全国に占める東北の割合は1・5%にすぎない。各県の誘客策に加えて、複数の県や団体が協力して周遊ルートをつくるなど、東北全体の魅力を向上させなければならない。 本県の宿泊者数は前年同期比22%増の11万2430人となった。しかし宿泊者数、増加率はともに6県中、4番目の水準だ。本県に足を運んでもらうためには何が必要なのかについてしっかり把握したうえで、特徴をアピールすることが重要だ。復興状況や安全性に関する情報発信も欠かせない。 震災前に比べ抜きんでて高い増加率を誇る青森県は、大型クルーズ船の誘致に注力している。18年は11月2日時点で、青森港だけでも外国船16隻を含む26隻が寄港、東北の他港に大きな差をつけた。 県は、新年度予算案に小名浜、相馬両港へのクルーズ船誘致のための事業費を盛り込んだ。クルーズ船の寄港は、乗客の観光や買い物、食事などで大きな経済効果が期待できる。本県は外国のクルーズ船の寄港実績がなく、後発となるが、一人でも多くの旅行者に本県を訪ねてもらうことが風評払拭(ふっしょく)にもつながると銘記し、誘致に全力を挙げてもらいたい。
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興と地方創生を一体的に推進していくために、限りある予算を効率的に運用していく知恵と工夫が求められる。 県が2019(平成31)年度の一般会計当初予算案を発表した。総額1兆4603億円で、前年度に比べ131億円増えた。予算規模が前年度を上回ったのは4年ぶりで、県は、全国で多発する自然災害を受け、堤防改修など防災関係の公共事業を増やしたことが要因としている。 政府の復興期間(2011~20年度)は残りあと2年となる。県には引き続き、震災復興を着実に進めながら、人口減少の影響を防ぐ地方創生を実現する取り組みが求められる。浜通り、中通り、会津地方の県民がそれぞれに地域再生を実感できるよう予算を最大限に活用することが重要だ。 浜通りの復興を後押しする福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想の関連事業は912億円を計上した。このうち、ロボット実証拠点「福島ロボットテストフィールド」(南相馬市、浪江町)については、新年度中の全施設の完成を目指す。 同構想はこれまで、拠点となる施設の整備を中心に進められてきたが、テストフィールドの完成で一区切りを迎える。新年度が拠点を活用して県内企業の新産業への参入を進め、経済効果を確実に広げていく転換点となるよう、全力を尽くすべきだ。 人口減少と高齢化社会への対応は、学生らのU、I、Jターン対策や子育てしやすい環境づくりなど多岐に及ぶ。関連事業数は267で、新年度の11の重点プロジェクトの中で最多となっている。 定住人口や交流人口を増やす取り組みは、全国的な人口減少の中で各都道府県がしのぎを削っているのが現状だ。予算に計上したことに満足せず、学校や企業などの関係機関に足を運んで働きかけを強化するなどの努力を重ね、本県への新たな人の流れをつくりだしていかなければならない。 震災から間もなく丸8年となるが、原発事故に伴う県産品などへの風評はいまだに根強く残っている。原発事故後の避難生活などで悪化した本県の健康指標も低迷したままになっている。 内堀雅雄知事は、予算案について「本県が進めてきた挑戦そのものを進化させなければならない」と語った。課題に向き合ってきたつもりが、行政の論理で前例踏襲の枠にとどまっているようなことはないか。一つ一つの政策が確実に実を結ぶよう心掛けてほしい。
健康長寿「日本一」の福島県をつくるためには、県と市町村がさらに連携を深めるとともに、県民が積極的に参加できるような施策の充実が求められる。 県内59の全市町村が2019年度当初予算編成で、健康対策を重視した取り組みを進める方針であることが、福島民友新聞が行ったアンケートで分かった。内訳は「非常に重視」が23市町村、「ある程度重視」が36市町村だった。 県民の健康に関わる指標は、心筋梗塞の死亡率が、男女ともに全国ワースト1位になるなど、悪化が目立つ。県の「第2次健康ふくしま21計画」の中間評価でも、中間目標値を達成した項目は全項目の36%にとどまっている。 健康対策の浸透や健康意識の普及拡大は、本県にとり喫緊の課題であり、全国に誇ることができる健康な県を実現するためには、市町村段階からのきめ細かな取り組みが不可欠だ。各市町村には地域に応じた特色と実効性のある施策を講じるよう求めたい。 アンケートでは、59市町村のうち6割強にあたる36市町村が、健康対策を「大きな課題」と捉え、意欲的に健康対策に取り組もうとしている状況が分かった。 課題の内容については、「住民への健康改善の意識付け」が35市町村で全体の6割弱を占め、「食生活改善」が11市町村、「運動不足」が5市町村、「高齢者の健康増進」が1町、「禁煙・受動喫煙対策」が1市などとなっている。 このうち「意識付け」が課題として自治体の多くは、特定健診や健康診断、特定の病気を見つけるための検診の受診率の低さを課題として挙げている。 県は、「健康」をテーマとした県民運動に2016年度から取り組んでおり、健康に対する県民意識の向上は重要テーマの一つだ。県は運動浸透に向けて、知事をトップとする官民一体の新たな推進組織を本年度中に設立する。市町村と県が足並みをそろえることで運動に弾みをつけることが肝要だ。 アンケートでは、介護予防として独自の体操や、減塩に向けた塩分測定器購入費助成、運動を習慣づけるための教室開催など、市町村ごとに、さまざまな取り組みが行われていることも分かった。効果がある取り組みについては各自治体が情報を共有し合い、一層の効果向上を目指してほしい。 健康づくりの主役は県民一人一人である。明日からは「ふくしま健民検定」が始まる。スマートフォンなどで気軽に参加できる検定だ。健康長寿への一歩を踏み出す良い機会として捉え挑戦したい。
「確かにネットは便利だが、一歩間違えれば底なしの危険が待ち構えている」 この冬に映画化された小説「スマホを落としただけなのに」(志駕晃著)の一節だ。恋人がスマートフォンを落とし、主人公である女性の個人情報が流出する。身に覚えのないクレジットカードの請求や、会員制交流サイト(SNS)でつながっている男からのストーキングなどが始まり、凶悪事件に巻き込まれていく。インターネット社会の闇を描いた作品だ。 多くの人がスマホやパソコンを身近に使っている中、小説のような出来事は実際にも起こり得る。ネット上で行われる犯罪「サイバー犯罪」に遭わないよう防御策に万全を尽くしたい。 県警が昨年1年間に摘発したサイバー犯罪が、前年比109件増の209件で過去最多に上った。 罪種別に見ると、スマホゲームの他人のアカウントに不正にアクセスしてゲームデータを乗っ取るといった「不正アクセス禁止法違反」が93件で最も多かった。SNSなどを介して未成年が性被害などに遭う「青少年健全育成条例違反」の40件、詐欺や業務妨害といった「刑法犯」34件が続いた。 サイバー犯罪に関する相談件数は3757件で前年より104件減ったが、迷惑メール関係は364件(前年比198件増)、クレジットカード被害関係は162件(同120件増)で急増した。 サイバー犯罪は悪質、巧妙化が進んでいる。最近増えているのは宅配業者を装ったメールという。「荷物が届いている」とメールを送り、本物の宅配業者とそっくりのホームページに誘導して個人情報を入力させるものだ。もし入力してしまえば、クレジット詐欺などの被害に遭う可能性がある。 サイバー犯罪の被害防止には普段からの心構えが重要だ。身に覚えがなかったり怪しいメールは開かずに削除する、個人情報をむやみに書き込まない、パスワードは小まめに変更する、最新のウイルス対策ソフトを使う―といった基本的な対策を徹底したい。 子どもたちが性的な暴力に遭ったり、わいせつな写真を要求されたりするケースも後を絶たない。 家庭や学校でネットとの安全な付き合い方を指導するとともに、子どものスマホに有害サイトを制限するフィルタリングを設定することが大切だ。 県警は、サイバー犯罪の対策強化に向けた戦略を本年度中に策定する。被害を未然に防ぐための啓発活動や、効果的な摘発につなげていくことが求められる。
目の前にある課題を一つずつ乗り越えながら、本格操業への道を着実に歩むことが大切だ。 東京電力福島第1原発事故後、本県沖で続いている漁業の試験操業で、相馬双葉、いわき市、小名浜機船底曳網の3漁協による2018年の水揚げ数量は4004トンとなり、前年に比べ22%増加した。県漁連は、シラスなど需要が多い魚種を中心に各漁協の出漁日が増えたことなどが水揚げ増の背景にあると分析する。 12年に始まった試験操業は、漁業者の努力で毎年水揚げ数量を伸ばしている。しかし、原発事故前の10年の約2万6千トンに比べると15・5%の水準にとどまっているのが現状だ。7年間の試験操業を通じて、漁ができる魚種や海域はほぼ震災前に戻ってきている。今後はさらなる水揚げ数量の増加を図ることで、漁業再生の道筋を確かなものにしていきたい。 県内の3漁協は、津波被害による漁船数の減少などの課題はあるものの、出漁日を増やし、漁獲量を高めていくだけの操業体制は整いつつあるとみている。ただ、氷や箱などを扱う業者や仲買人など水産関係の流通の足腰が弱まっていることから、増やした水揚げをさばききることができるのだろうか―という懸念があるという。 本県漁業を試験操業から本格操業へと導くためには、意欲のある漁業者が、安心して操業日を増やすことができるような流通環境をつくりだすことが欠かせない。国や県には、各漁協や市場関係者らと十分に協議した上で、水産物の水揚げから流通、販売までの各段階を総合的に強化する新たな漁業振興策を打ち出してほしい。 水揚げ数量を増やす過程では、他産地との競合がいっそう激しくなることも想定される。鮮度の良い状態で消費者に届ける工夫などを重ね、品質で選ばれ安定した価格を維持することができる「県産水産物のブランド化」をさらに進めることも忘れてはならない。 1月31日の試験操業では、エイの仲間「コモンカスベ」から、食品の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超える161ベクレルの放射性セシウムが検出された。県漁連は同日中に、水揚げしたコモンカスベの全量を回収する対応をとった。 試験操業で漁獲した魚が基準値を上回ったのは14年2月以来のことだ。今回の対応は、基準値超えの魚介類を排除し、市場流通させないシステムが確実に機能していることを意味する。正確な検査や情報公開などを通じて、市場の信頼を保ち、風評を拭っていく取り組みを続けていきたい。
インフルエンザが猛威をふるっている。流行はしばらく続く見通しだ。感染予防と重症化を防ぐための対策に全力を挙げたい。 県によると、県内83医療機関の患者数は27日までの1週間で、1機関あたり63・19人となり、記録が残る2009年以降では最多となった。「警報レベル」の30人を超える状況は3週連続である。 インフルエンザの流行は全国的で、厚生労働省の発表(14~20日分)によると、青森、秋田、島根を除く44都道府県で警報レベルに達している。背景には昨年12月中旬までの暖冬傾向から一転、年末から寒い日が多くなり、太平洋側を中心に空気が乾燥していることがある。年が明けて、学校や会社が始まったことで、一気に感染が拡大したとみられる。 インフルエンザは、患者のせきやくしゃみによる「飛沫(ひまつ)感染」と、ウイルスに汚染された場所を触ることによる「接触感染」が主な感染経路だ。閉塞(へいそく)した空間では「空気感染」の可能性があることを指摘する米国での報告もある。 予防には、ウイルスが手指を介して口や鼻に入らないよう手洗いを徹底することが肝心だ。マスクの予防効果は限定的とされるが、手で口や鼻を触れることによる接触感染を防ぐ効果が期待できる。 一方、患者はマスクの積極的な着用が求められる。インフルエンザの患者は、1回のせきで約10万個、くしゃみでは約200万個のウイルスを放出するという。飛沫の周囲への拡散を抑えるために「せきエチケット」を守りたい。 高齢者施設での集団感染が全国で相次いでいる。県内でも今季は6施設で集団感染が報告されている。他県では死者も出ている。 体力が衰えた高齢者は、重症化しやすい。衛生管理の徹底や来訪者の制限などのほか、感染が広がりそうな場合は日本感染症学会が勧める予防的な薬の投与を考えるなど最善を尽くすよう求めたい。 治療薬の服用の有無にかかわらず、突然走り出したり、高い所から飛び降りたりするなどの異常行動にも注意が要る。東京都では30代の会社員女性が駅のホームから転落して死亡、埼玉県では小6男児がマンション3階から落ちてけがをした。因果関係は不明だが、インフルエンザに感染していた。 昨年発売されたばかりの新薬に人気が集まっている。既存薬に比べて使いやすいためだ。ただ、薬が効かない耐性ウイルスができやすいという課題がある。医師はこうした特性を患者に詳しく説明する必要がある。国や製薬会社は情報の収集と周知に努めてほしい。
持ち味の攻める相撲を極めて、さらなる高みを目指してほしい。 大相撲初場所で幕下全勝優勝を果たした西幕下3枚目の若元春=本名大波港(みなと)、福島市出身、荒汐部屋=の十両昇進が決まった。 2011年11月の九州場所で初土俵を踏んでから約7年をかけてつかみ取った関取の座だ。幕下上位の壁に阻まれて思うように結果を出せない時期もあったが、あきらめずに相撲と向き合ってきたことが十両への道を開いた。積み重ねてきた努力をたたえたい。 若元春は、今回の初場所で好成績を収めれば十両昇進が有望だった。それだけに気合の入った取り口が目を引いた。得意の左四つに加え、積極的に前に出る相撲で勝ち星を積み上げ、土つかずで場所を終えた。表彰式後の「自分の相撲を取ることができた」との感想からは、ベストな取組を通して自信がついた様子が見て取れる。 新たなチャレンジの場となる十両での取組は、これまで以上に体が大きく屈強な力士がそろう。立ち合いで力負けしないパワーをつけることが必要となる。 若元春は、きのうの番付編成会議後に行われた記者会見で「体重を増やして、体の大きな人にも押し負けないようにしたい」と抱負を述べた。けがに注意しながら、体づくりに励んでもらいたい。 十両を勝ち抜き、幕内に昇進していくためには体を鍛え、技を磨くとともに、精神面の強さを身に付けることも欠かせない。角界を背負って立つような意気込みを持って精進を重ね、心技体のバランスが取れた力士に成長していくことを期待する。 若元春は、弟に十両の若隆景=本名渥(あつし)、荒汐部屋=がおり、史上20組目の兄弟関取が誕生した。また幕下には兄の若隆元=本名渡(わたる)、同=がいる。若隆元は初場所を5勝2敗で勝ち越し、来場所でさらなる飛躍が期待されている。 兄弟同士で切磋琢磨(せっさたくま)し、支え合うことで3兄弟そろっての関取を実現し、多くの大相撲ファンを沸かせてほしい。 県相撲連盟によると、県内で相撲に取り組んでいる選手は、子どもから大人まで300人近くいるという。少子化や指導者不足などを背景に、競技人口は減少傾向にあるのが現状だ。 厳しい環境の中、若元春の昇進は本県相撲界にとって明るいニュースだ。選手たちの大きな励みになる。相撲をやってみたいという子どもも出てくるだろう。郷土力士たちの活躍を追い風に競技の振興を図り、後に続く力士の育成に取り組んでいくことが大切だ。
働きやすい環境づくりを通じて若者、企業、地域がともに元気になっていく道を探りたい。 厚生労働大臣が若者の採用や育成に積極的な中小企業を認定する「ユースエール認定制度」について、福島労働局管内の認定企業数が昨年12月末現在、34社に上り、東京都に次いで全国2位だったことが分かった。 同制度は、若者雇用促進法に基づき2015年10月からスタートした。認定を受けるためには、正社員の月平均の残業時間が20時間以下であることや、女性従業員の育児休業取得率が75%以上であることなど、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)などに関連した12項目の条件を全てクリアすることが必要になっている。 認定を受けた企業には、ハローワーク主催の就職面接会への参加が優先的に認められており、優秀な人材に出会う機会が広がる。若手を育成するための政府系の助成金や融資を受ける際の優遇措置もある。同局には、認定の利点を丁寧に説明することでさらに多くの企業の参加を呼び掛け、県内の労働環境の向上につなげてほしい。 同局の調べでは、県内の高校を卒業して就職した人のうち、入社3年目までに離職してしまう人の割合はおおむね40%台で推移している。しかし、ユースエール認定企業では、3年目までの離職率は20%を切っており、なかには離職率がゼロという企業もある。 同局は、認定企業には業務に必要な資格の取得費用を負担するなど、社員のやる気を引き出す仕組みの整備も求められていることから、結果的に離職率が低いと分析する。就職を志望する人は、充実した社会人生活を送るための判断材料の一つとして、就職先を選ぶ際に認定の有無、あるいは認定企業に近い労働環境にあるかどうかを確認してみてはどうだろうか。 今年3月に卒業する高校生の就職状況(昨年11月末現在)をみると、求人倍率が2・13倍と高水準であるにもかかわらず、23・6%の生徒が県外企業への就職を決めている。昨年4月に実施した意向調査では、84%の生徒が県内就職を希望していたことを踏まえると、一定数の生徒が県外就職に転じたことが読み取れる。 人口減少が進む中では、若者に就職を通じて地元に定着してもらうことが、地域の活力を維持する上で重要な要素になる。自治体の入札制度でユースエール認定企業に加点するなどの仕組みを整えることを通じて、若者の雇用に向けて努力する中小企業を地域ぐるみで後押ししていきたい。
新たな時代を迎えるにあたり求められるのは、実効ある政策と実行力であることを銘記すべきだ。 通常国会が召集された。会期は6月26日までの150日間。与野党ともに4月の統一地方選や夏の参院選を見据えた国会となる。 安倍晋三首相は施政方針演説で「平成の、その先の時代」というフレーズを7回繰り返し、皇位継承に伴う新時代の到来を強調した。新しい時代への期待感は高まるが、社会生活に深く関わる法案や不祥事の真相解明など今国会も重要課題が並ぶ。国民は政局ではなく政策論議を求めていることを認識し熟議を尽くしてほしい。 首相は演説でアベノミクスの実績をアピール。子どもから高齢者まで安心できる「全世代型社会保障への転換」や、消費税引き上げによる腰折れ防止策などを列挙した。参院選へ政権戦略の本音も透けるが、経済最優先で政権運営に臨む方針そのものは理解できる。 しかし、毎月勤労統計の不正調査などによって募る政府不信の解消策は踏み込み不足の印象が拭えない。首相は演説で、統計の不正を陳謝したものの、具体的な再発防止策などには触れなかった。首相には行政の最高指導者としての厳しい自覚を求めたい。 2019年度当初予算案の一般会計総額は、膨張する社会保障費や防衛費に加え、大盤振る舞いとも言える景気対策や公共事業費の伸びで、初めて100兆円を超えるまでに膨れ上がった。 首相は「明日を切り開く」と意気込むが、本来取り組むべき持続可能な社会保障制度の構築や、先送りした財政健全化について踏み込んだ言及はなかった。新時代を迎えるいまだからこそ、耳の痛い話を避けるべきではないだろう。 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興については「福島の復興なくして東北の復興なし。東北の復興なくして日本の再生なし」と述べ、国が前面に立つ考えを言明した。同時に、来年の東京五輪で復興した姿を世界に発信しようとも呼び掛けた。 来年は震災から10年目という大きな節目を迎える。全体的にみれば本県の復興は進んでいるが、原発事故による風評は根強く残り、帰還困難区域の再生や第1原発の廃炉などこれから取り組まなければならないものが山積している。 国の復興期間は20年度末までだが、21年度以降の復興を支える仕組みや20年度末で廃止される復興庁の後継組織の行方は不透明だ。本県の新たな時代を切り開くためには首相の強い指導力と、与野党の枠を超えた対応が欠かせない。
本県が持つ豊かな自然の魅力を再発見し、復興をけん引する観光資源として磨き上げていきたい。 県は環境省と連携し、県内の自然を生かした新たな復興推進事業「グリーン復興」に取り組む。エコツーリズムなどを通じて、自然体験を望む観光客や訪日外国人旅行者の増加を目指す。同省が進める「福島再生・未来志向プロジェクト」の一環として行われる。 グリーン復興は、自然公園を中心とした地域振興策を展開することで、東日本大震災からの地域再生を前に進める試み。県と同省は本年度内に共同で基本構想をまとめる見通しだ。震災後の除染などにより県内の環境は回復が進んでいる。多くの人に本県を訪れてもらう事業となるよう、構想を練り上げていくことが重要だ。 本県には磐梯朝日、日光、尾瀬の三つの国立公園と、越後三山只見国定公園、11の県立自然公園がある。利用者数の合計は震災前には年間1600万人程度で推移してきたが、震災が発生した11年度には877万人まで落ち込んだ。翌年度には1千万人台まで回復したものの、現在も震災前の7割程度で頭打ちになっている。 利用者の減少は、津波の被害を受けた浜通りの公園にとどまらず、原発事故による風評もあり全県的な傾向になっている。利用者の増加を実現するためには、旅行ファンが立ち寄りたいと思う魅力ある公園づくりが欠かせない。登山道を組み合わせた周遊ルートの新設、歴史や文化を体験できるツアーの企画などを進め、積極的に情報発信することが求められる。 本県が手本としたいのは、同省が16年度から八つの国立公園を中心に展開している「国立公園満喫プロジェクト」だ。民間企業などと連携し、キャンプ場の修繕や公園に着くまでの二次交通の整備など、総合的なサービス向上を図ることで、外国人旅行者の増加を目指す取り組みになっている。 プロジェクトでは、休廃業した観光施設など公園の魅力を下げる原因を取り除く「引き算の景観改善」なども進められている。同省が積み重ねた公園改善のノウハウは、本県のグリーン復興にも役立つはずだ。県には受け身になることなく、国内で実施されている最先端の取り組みの導入を図り、観光客の受け入れ態勢の充実に全力を尽くしてほしい。 グリーン復興は来年度から試行的に始まり、20年度以降に本格化する見通しだ。同年度には磐梯朝日国立公園が指定70周年の節目を迎える。中長期的な観光振興策として活用していきたい。
悩んだり苦しんだりしている人たちの心の叫びを受け止め、命を守る取り組みを強めたい。 電話相談を通して自殺を防ぐ活動に取り組んでいる社会福祉法人「福島いのちの電話」のボランティア相談員が不足している。いのちの電話は1997年の開設以来、悩みを持つ人の「駆け込み寺」として大きな役割を果たしてきた。しかしボランティア不足から、相談時間の拡大や、相談を受ける電話の台数を増やすことが難しく、電話してもつながりにくい状態が慢性化している。 このため同法人は電話相談に関心がある人を対象にしたボランティアセミナーを初めて企画した。あす27日に福島市、2月23日に郡山市で開く。いのちの電話の紹介や、参加者のメンタルヘルスチェックなどを通し、相談員の活動に理解を深めてもらうのが狙いだ。 相談員は、いのちの電話を支える大切な柱である。多くの人たちにセミナーに参加してもらい、1人でも多く相談員を増やしたい。 福島いのちの電話では現在、約100人の相談員が活動している。福島市と郡山市の2カ所に拠点を置き、通常は毎日午前10時から午後10時までの12時間、2回線で電話相談を行う。 2017年の相談件数は約1万5千件で、事務局によると「ぎりぎりの人員でやりくりしている状況」だ。毎日24時間での対応を目指しているが、実現には相談員があと80人ほど足りないという。 警察庁のまとめによると、全国の自殺者数は昨年まで9年連続で減少しているが、本県は一昨年、昨年と2年連続で増加している。人口10万人当たりの自殺者数は本県の場合20.6人で都道府県別では7番目に多く、深刻な事態となっている。自殺者をなくすためには悩みを持つ人の声を聞き、適切な助言ができる相談員を増やすことが急務だ。 相談員になるためには、約2年間にわたって毎月数回の研修を受ける必要がある。研修を受けるための費用も自己負担で、相談員になっても報酬はない。活動するためのハードルは決して低くはないが、相談員には思い悩んでいる人たちを支えるという掛け替えのない役目とやりがいがある。 県内では、自分の周りで悩んでいる人のサインに気付き、声を掛けてあげたり、必要な支援につなげたりすることで自殺を防ぐ「ゲートキーパー」の養成活動も行われている。 地域や職場でも身近な人たちを見守る体制を整え、これ以上の悲劇をなくしたい。
市町村が持つ強みを生かし、相乗効果を生み出すことができるような広域圏にすることが重要だ。 郡山市と周辺14市町村が「こおりやま広域連携中枢都市圏」の連携協定を締結した。人口減少を最小限に食い止めるため、国の財政支援を受けながら、持続可能な地域の実現を目指す。 人口減少対策と地方創生には全国の自治体が取り組んでいるが、一つ一つの自治体だけでは力に限りがある。地域の活力を維持し、発展させるために、自治体が連携し合うことは有意義だ。 こおりやま広域圏は、中核となる郡山市と、須賀川、田村、本宮の3市、三春、小野、鏡石、石川、浅川、古殿、猪苗代の7町、大玉、天栄、玉川、平田の4村の合わせて15市町村で構成する。 圏域人口は約59万人で県全体の約3割を占めるが、2040年には約46万人にまで減少すると推計されている。このため、市町村が連携し、医療や保育、公共サービスなどの各分野を充実させることで、長期的に50万人規模の人口を維持することを目指す。 協定締結を受けて、地域振興に向けた将来構想や具体的な取り組みをまとめた「都市圏ビジョン」を本年度中に作り、新年度から事業をスタートさせる。東北地方では八戸、盛岡の両圏域に次ぎ3例目、県内では初の広域圏となる。先行例としてふさわしい広域圏になるよう全力を尽くしてほしい。 郡山市によると、都市圏ビジョンは、経済成長のけん引や、高次の都市機能の集積・強化、防災対策の充実と生活関連機能サービスの向上―を柱に、62の連携事業が盛り込まれる見通しだ。 広域圏の制度は、暮らしに大きな変化をもたらすものではないため成果が目に見えにくい側面がある。こおりやま広域圏の場合は、圏域が県中、県南を中心に一部は県北、会津まで広範なため、さらに分かりにくくなる恐れがある。 同圏域では既に、多言語観光ウェブサイトの開設や、首都圏から定住・移住を促進するための情報紙の発行、職員研修や住民セミナーの開催など先行した取り組みが始まっている。 市町村は広域圏に参加した目的と、事業の内容について、住民に詳しく説明し、理解を得るとともに、事業の実効性を高めて、広域圏の恩恵が実感できるよう努めなければならない。 同広域圏には二本松市も新たに参加を表明した。同市を含めた都市圏形成には1年程度を要する見通しだ。県内初の広域圏がどう展開していくかを見極めたい。
「水素社会」の実現に向けた取り組みを着実に進め、市の発展と浜通りの復興につなげたい。 いわき市内で水素の利活用を進める動きが加速している。民間主導で市内に整備が進む県内初の商用定置式水素ステーションが3月に完成するのを踏まえ、いわき商工会議所が呼び掛け、市内の複数の企業が水素を動力源とする燃料電池自動車(FCV)を計26台導入する予定になっている。 水素は、化石燃料に代わる次世代のエネルギー源として、自動車や産業分野での研究開発が進んでいる。特に風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーを使ってつくった水素は、製造過程で二酸化炭素(CO2)を排出しないため、地球温暖化を引き起こさない環境に配慮したエネルギーとして注目されている。 水素の製造を巡っては、浪江町に再生可能エネルギーを活用した世界最大級の製造拠点の整備が進められている。同商議所は、製造拠点の近くのいわき市内に水素を積極的に使う環境をつくることで、水素エネルギーの需要と供給による新たな経済循環を生み出そうとしている。双葉郡を含めた広域的な地域再生につながるよう水素利用の輪を広げてほしい。 同商議所は、FCVが走る姿を市民や企業に見てもらうことが、水素エネルギー利活用の第一歩になると分析している。次のステップとしては、さらなるFCVの導入などを進めていわきが水素利用を推進する地域であることをアピールし、水素関連の企業や実証事業の誘致に結び付け、経済の活性化を図る道筋を描いている。 民間の動きに歩調を合わせ、いわき市もFCVや水素バス(FCバス)を購入する企業への補助などを検討している。しかし、企業誘致などを実現するためにはより一層の連携強化が求められる。水素関連の振興計画をつくるなどして戦略を明確にし、官民一丸となって次世代エネルギーの先進地を目指す体制を確実なものとしていくことが重要だ。 政府は、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興事業の一環として、本県で再生可能エネルギーなどの分野に対して重点的な支援を行っている。 水素の利活用は全国的にも始まったばかりだ。政府の支援を追い風に、いち早く「つくる」「ためる」「使う」のサイクルをつくり上げることができれば、まちづくりのノウハウを国内外に売り込むことが可能になる。雇用を生み出す本県発の新たな産業になるよう努力を重ねることが欠かせない。
学校給食の「地産地消」を進めることで、子どもたちの「食育」に役立てるとともに、県産品の安全性やおいしさへの正しい理解を全国に広げていきたい。 県内の小中学校の給食で、県産食材が使われた割合は、県教委が行った2018年度の調査によると40・8%に上り、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故前の水準を初めて上回った。 県は総合計画で、県産食材の活用を20年度には「40%以上」とする目標を掲げているが、2年前倒しして達成する形となった。今後も積極的な活用に取り組み、地産地消を確実なものにしたい。 学校給食への県産食材の活用は震災前の10年度は36・1%あったが、原発事故の影響で12年度には18・3%と半減した。その後は少しずつ回復して、17年度には全国平均の26・4%に対し本県は35・6%と、9ポイント余も上回る状況にまでなっていた。 今回の結果は、事故後に行われている放射性物質濃度検査や、給食の試食会などを通じて、安全性に対する保護者の理解が深まってきたことが主な要因とみられる。 調査によると、県北、県中、県南、会津、南会津、相双・いわきの6地域ごとにみても、全ての地域で震災前の水準を上回った。 ただ県教委によると、大都市部では活用割合が低い傾向にあるという。児童・生徒数が多いため数量の確保などが課題になる。JAなど生産者団体ともさらに連携を強めて課題を解決し、地場産品の活用を推し進めるべきだ。 一方で、保護者の一部には安全性に不安を抱く人もいる。不安の解消に向けては、今後も検査を継続するとともに、県産農産物は安全性が確かなものだけしか流通しておらず、給食についてはさらに対策が講じられていることなどを具体的に説明し、理解してもらうことが重要だ。 県産農産物に対する原発事故の風評は国内外に根強く残っているが、県民が率先して県産品を利用することが風評を拭い去ることにつながる。給食への県産品活用はその一つであり、農家の安定的な出荷先の確保にもなる。 学校給食への地場産品活用については、国も食育を図る観点から取り組んでおり、「第3次食育推進基本計画」は20年度までに「30%以上」を目標に掲げている。 新鮮な地場産品の活用は、栄養バランスという面からも有効であるのをはじめ、郷土愛を育み、農業に対する理解促進に役立つ。健全な食生活の習慣や知識を身に付けるためにも推進していきたい。
ゴール手前、本県アンカーがユニホームに書かれた「福島」の文字を何度も指さし、念願の優勝をアピールした。その雄姿に多くの人が心を打たれたことだろう。 広島市で行われた第24回全国都道府県対抗男子駅伝競走大会で、本県が2時間19分43秒で優勝し、東北勢として初の栄冠に輝いた。 全ての県民と喜びを分かち合うとともに、熱い走りで感動を届けてくれた選手たちをたたえたい。 本県の総合力が光ったレースだった。序盤から上位争いに加わった本県は、25秒差の2位で最終7区の相沢晃選手(東洋大3年、学法石川高卒)にたすきを託した。相沢選手は区間賞の走りで先頭を抜き去り、そのままゴールを駆け抜けた。見事な逆転劇だった。 今大会、本県チームの前評判は非常に高かった。昨年末の全国高校駅伝で3位となった学法石川高のメンバーや、今年正月の箱根駅伝で活躍した大学生らを擁し、中学生も力のある選手らが集まったためだ。大会事務局が出走予定選手の今季ベストタイムを基に算出したランキングでは、47都道府県の中で1位という予想だった。 ただ、大舞台で本来の実力を発揮するということは往々にして難しいものだ。さらに優勝への期待が高まれば高まるほど、選手らが感じるプレッシャーも大きくなる。重圧をはねのけ、一人一人が力を出し切ってつかみ取った優勝には大きな意義がある。 本県チームはこれまで2度にわたり、あと一歩のところで頂点を逃してきた。1999年の第4回大会はアンカー藤田敦史選手(当時・駒沢大4年)の猛追及ばずトップに24秒差で涙をのんだ。2010年の第15回大会は、佐藤敦之選手(同・中国電力)と柏原竜二選手(同・東洋大2年)の"ダブルエース"で臨んだが、わずか3秒の差で優勝には届かなかった。 今大会での勝因には各世代にバランスよく実力者がそろったことが挙げられよう。県体協や福島陸上競技協会は今回の優勝経験を糧に、ジュニア世代から社会人に至る選手のさらなる強化を図り、連覇への土台を築いてもらいたい。 本県チームの安西秀幸監督はレース後、「力強い走りで、福島が力強く生きていることを全国にアピールできた」と話した。 スポーツで県勢が活躍すれば、県民も勇気づけられる。ことしは全国高校サッカー選手権で尚志高も3位入賞するなど、本県スポーツ界が盛り上がりを見せている。県勢の躍進に多くの県民が刺激を受け、運動による健康づくりが広がっていくことにも期待したい。
〈浜の真砂(まさご)は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ〉。伝説の盗賊、石川五右衛門の辞世と伝えられる。この句が言うように、なりすまし詐欺の犯行グループは次々と新たな手口を考え、大事な財産を狙ってくる。全ての人が「自分は大丈夫」との過信を排除し、警戒を怠らないようにしたい。 県警が昨年1年間に確認したなりすまし詐欺の被害件数は99件で、被害額は1億6203万円に上った。被害額は2014年の4億7079万円をピークに4年連続で減少しているが、それでも多額の現金が県民から奪われている状況に変わりはない。 特に、自宅を直接訪ねてきた犯人にキャッシュカードをだまし取られる被害が増えている。昨年は13件(前年比4件増)で、被害額は1512万円(同272万円増)だった。昨年11月には、浜通りの80代男性が780万円という多額の被害に遭っている。 その具体的な手口はこうだ。 男性宅に、警察署員と金融庁職員を名乗る男らが「あなたのキャッシュカードが偽造された」と相次いで電話をかけてきた。数時間後に担当者だという男が訪れ、封筒にキャッシュカードと暗証番号を書いた紙を入れてしばらく開けずに自宅で保管するよう男性に指示した。数日後、不審に思った男性が封筒を開けてみるとキャッシュカードは入ってなかった。担当者が男性宅を訪れた時、隙を見て中身を入れ替えていたらしい。 なりすまし詐欺は従来、銀行などから現金を振り込ませる手口が多かったが、最近は金融機関で多額の現金を下ろしたり、振り込もうとしている人への注意喚起が進んだ。そのため県警は詐欺グループが金融機関を介在しない手口に切り替えた可能性があるとみる。 警察や公的機関などがキャッシュカードを預かったり、暗証番号を聞いたりすることはあり得ない。電話などでこうした要求をされたら、まずは詐欺を疑い、警察に通報することが大切だ。 最近は、「改元に伴い、不正操作防止用キャッシュカードに変更する」「東京五輪のチケットが当たったので料金を振り込んでほしい」などと話題性に乗じてカードや現金をだまし取ろうとする手口も首都圏を中心に出てきている。 今後は県内でも発生の恐れがある。怪しい話には注意が必要だ。 県警は昨年、詐欺被害に遭う危険度を判定するチェック表を作り、小中学校や事業所などを通じて配布を始めた。家族全員が防犯意識を共有することで、卑劣な詐欺を世の中から撲滅したい。
教職員の人件費など国立大経営の土台となる国からの運営費交付金について、安倍政権は2019年度予算案で、評価に基づく傾斜配分の割合を現行の約3倍、全体の1割に当たる約1千億円に拡大することを決めた。 表向きの狙いは「国立大の経営改革」だが、本音は財政負担の削減だ。20年度以降、傾斜配分の割合も前年度からの変動幅も拡大させるという。安易な形で「選択と集中」が進めば、経営基盤の弱い国立大では存続に関わる事態になりかねない。 税金を投じるに当たり、経営や教育・研究の改善を求めるのは当然だ。ただその前提として、社会の知的基盤である大学をどう支援し、日本の強みとして伸ばしていくかという長期的視点に立った政策がなければならないはずだ。 だが実際にはそれがないまま推移してきたと言わざるを得ない。傾斜配分枠1割という数字も現状分析を踏まえた根拠を欠く。行政機関だった国立大が04年に法人化されて以来、運営費交付金は機械的な削減が続き、今や同交付金と授業料など学生納付金だけでは運営基盤を賄えない状況に至った。 その結果、教育・研究環境の悪化が進んだ。退職者の補充ができず、老朽化した施設や設備も更新できない。大学内部で配られる資金で研究を下支えし、そこから出た「芽」を外部の資金で伸ばすという、世界がうらやむようなシステムは失われた。 多くの若手に任期付きの不安定な職しか提供できない。大学院博士課程に進む学生は減り続けている。研究力低下も指摘される。今回の決定だけでなく、各地で進む国立大の法人統合の動きも、詰まるところ、日本全体の研究力低下を加速させるだけではないのか。 傾斜配分枠の拡大に当たり、文部科学省は新たな評価基準を設ける。外部資金の獲得実績など経営面の指標に加え、研究面の指標として引用数の多い論文の数を使うとしている。しかし、研究活動を測る適切な物差しはないというのが世界の常識だ。 大発見を報告した論文は、引用されるまで長い時間がかかることもあり、学際的な分野に不利に働くとの指摘もある。 安倍政権は「イノベーション創出のための大学改革」を掲げる。経済成長に大学が果たす役割は限定的だが、安直な政策では、そんな効果すら期待できそうもない。不透明感が増し、さまざまな課題を解決するための知恵が求められる時代に大学をどう生かしていくのか、丁寧な政策論議が必要だ。
福島県に来て、見て、味わってから、旅行の可否を判断してもらえないものか。考えてほしい。 東北地方の経済界や自治体などで構成する「東北観光推進機構」(仙台市)が20日から5日間、マレーシアの旅行会社やメディア、航空会社の担当者らを招いて行う東北ツアーの訪問先に本県が含まれていないことが分かった。 機構によると、ツアーの連携相手となるマレーシア最大手の旅行会社が安全への確証が得られるまで本県への送客を行わないとの方針を示したため、本県を除く5県でのツアー内容になったという。 東日本大震災と原発事故から8年近くたち、本県の復興は大きく前進し、農産物や魚介類など県産品は安全性が確保されたもの以外は流通していない状況を丁寧に説明し尽くした結果なのかどうか。 東北の認知度向上と誘客拡大を掲げ、本県も県や県商工会議所連合会、企業などが会員に名を連ねる同機構の事業であるだけに極めて残念と言わざるを得ない。 今回のツアーは、観光地に訪日外国人を呼び込むことを目的に、海外のメディアや旅行会社などを招待し観光体験をしてもらう「ファムツアー」と言われるものだ。 ファムツアーは、ツアーやサービスの内容について、外国人の目線から生の声を聞くことができるという利点がある。メディアには情報発信が期待できることから全国各地で企画が相次いでいる。 今回のツアーは旅行会社4社、新聞社2社、ウェブメディア1社、航空会社1社から計9人が参加することになっている。原発事故の風評を拭うために、多くの人たちに復興の状況や、農産物や日本酒などのおいしさを知ってもらうことを目指す本県としては、ぜひ訪れてほしいメンバーである。 同機構は、本県の魅力や安全性を知ってもらうため、ツアーの移動中に観光パンフレットの配布や動画上映を行うというが、本県の状況を理解してもらうためには十分とは言えないだろう。県や観光団体の担当者が直接、参加者に説明できるような場が設定できないか。前向きな対応を求めたい。 今回のツアーは、チャーター便を使った旅行商品づくりを目的とする。機構によると、東北ではマレーシアからのチャーター便は前例がなく、運航が決まれば東北全体に効果をもたらすとみている。 同国からの訪日客は年々増えており、昨年は約47万人に上った。本県からは米や桃などの輸出実績がある。本県に実際に足を運んで県産品を味わってもらえるよう理解促進に努めなければならない。
魚のおいしさをより多くの人に知ってもらい、食べてもらうことで漁業の再興につなげたい。 いわき市議会が「魚食」を推進する条例の制定を検討している。地場産魚介類の消費拡大を図り、水産業の振興を後押しするのが狙いだ。年内に条例案を定例会に提出する方針で、制定されれば魚食を推進する条例は県内初となる。 同市議会は、漁業の盛り上がりは復興の大きな力になるとして、2年ほど前から条例制定に向けて研究をしてきた。市民や漁業関係者、商工業者などが広く関わり、効果を上げることができる条例にしてもらいたい。 条例を制定する背景には魚離れへの危機感がある。農林水産省によると、全国の魚介類の消費量は2001年度をピークに減少傾向が続いており、16年度にはピーク時の約6割にまで減った。魚は調理に手間がかかるとして敬遠されたり、消費者の好みが肉へと変化したことなどが要因とみられる。 一方、魚介類はタンパク質が豊富で、魚の脂には心臓疾患や糖尿病の予防などに効果がある成分も多く含まれるなど、健康的な食材であることはよく知られている。農水省が消費者を対象に行った意識調査によると、「魚介類を食べる頻度を増やしたい」と考えている人は7割近くに上った。こうした健康志向を的確に捉え、魚食をアピールしていくことも大切だ。 同市では中央卸売市場の卸、仲卸会社が協力し合い、若い世代に魚のさばき方などを伝授するイベントが開かれている。 条例には「魚食の日(仮称)」を定めたり、魚食を推進する民間への支援策などを盛り込む方針という。既に行われている取り組みも巻き込みながら、官民の連携体制を強化していきたい。 子どもの時から魚料理に親しんでいれば、成長してからも食べ続けることが期待できる。 給食に地場産の魚介類を積極的に使ったり、学校で魚の食文化を学ぶ授業を行ったりするなど食育にも力を入れる必要がある。 黒潮と親潮が交わるいわきの海で取れる魚介類は「常磐もの」と呼ばれ、市場で高い評価を得ている。新鮮な海の幸は、貴重な観光資源でもある。地場産の魚料理を楽しみに多くの観光客が訪れるよう知恵を絞ることも不可欠だ。 同市では、東京電力福島第1原発事故に伴い自粛していた漁業の試験操業が13年に始まり、水揚げ量は当初の約13トンから、17年には約647トンまで増加した。より多くの人に食べてもらうことで、本格操業に向けて弾みをつけたい。
郡山市を中心とした県中、県南地域の発展に向け、高速交通網を強化した成果を最大限に引き出していくことが重要だ。 東日本高速道路(ネクスコ東日本)と郡山市が、同市西部に整備を進めていた東北道郡山中央スマートインターチェンジ(IC)が開通した。郡山、郡山南両ICの中間にあり、県道郡山矢吹線(通称・新さくら通り)と東北道を接続する形で整備した。自動料金収受システム(ETC)を搭載した車専用のICで、1日当たり約2000台の利用を見込む。 従来、東北道から郡山市役所やJR郡山駅がある同市の中心市街地に向かう際には、市北部の郡山ICからは国道49号、市南部の郡山南ICからは国道4号や内環状線などの交通量の多い道路を利用する必要があった。 スマートICの開通で、東北道と郡山市の中心市街地は市を東西に横切る道路によって直線で結ばれる。同市の試算によれば、市役所までの所要時間は従来のICを利用するよりも3~4分短縮されるという。同市には、開通で生まれる新たな交通の流れを生かし、地域経済の活性化や市内の交通渋滞の緩和につなげてもらいたい。 医療の分野からも注目が集まる。市中心部にある太田西ノ内病院は県中、県南地域で唯一、重篤な救急患者を受け入れることができる第3次救急医療施設だ。その他の医療機関も県中、県南地域からの救急搬送を受け入れている。 救命救急では、患者が医師の処置を受けるまでの1分1秒が大切になってくる。各地の消防本部と医療機関には、スマートICをどのように使えば搬送時間を短縮できるのかを協議し県中、県南地域の救命率の向上を図ってほしい。 スマートICから約1キロの距離には、陸上自衛隊の郡山駐屯地がある。インターの形状は、自衛隊が災害派遣などで使用する大型車両でも支障なく通行できるように設計されている。 気候の変化で豪雨災害などが多発している。郡山駐屯地から各地への救援活動が円滑になるばかりではなく、県内で災害が発生した場合には救援部隊や物資を受け入れるルートとして活用することができる。地域の防災力の向上にも役立てていきたい。 郡山市は近隣の14市町村と、行政サービスや人口減少対策など共通の課題に取り組む「連携中枢都市圏」の形成を目指している。 スマートICの開通を契機に、構成自治体間の人や物の動きを活発にし、地域の持続的な成長を進めていくことも欠かせない。
内臓脂肪が増え、生活習慣病や血管の病気になりやすくなる「メタボリック症候群」の解消と予防に全力を挙げなければならない。 厚生労働省のまとめによると、2016年度に特定健康診査(メタボ健診)を受けた県民のうち、メタボ症候群と診断されたのは17.3%で、15年度に比べて0.2ポイント悪化した。全国順位は秋田県と並んでワースト3位だった。 県民のメタボ率は東日本大震災と原発事故の前年にあたる10年度は15.2%で、全国14番目の水準だったが、震災後は一段と上昇、悪化した。14、15の両年度は連続で17.1%となり、それぞれワースト2位、3位だった。依然深刻な状況であり、改善への取り組みを一層強化する必要がある。 メタボ症候群は「代謝症候群」や「内臓脂肪症候群」ともいわれている。内臓肥満に高血圧症や高血糖、脂質代謝異常が組み合わさると、心筋梗塞や脳卒中など動脈硬化性疾患を招きやすくなる。 メタボ健診は08年度から40~74歳を対象に行われている。健診では腹囲を測定し、男性は85センチ、女性は90センチを超える人をふるい分ける。その上で、血圧と血糖、脂質のうち、異常値が二つ以上ある人はメタボ該当者、一つの人は予備群と診断される。 メタボ症候群で注意しなければならないのは自覚症状がほとんどないことだ。動脈硬化が進行して、気付いたときには手遅れという状況になりかねない。早期発見につなげるために健診を受けることが大切だが、受診率は本県の場合、5割強にとどまっている。受診率の向上を急がなければならない。 県民のメタボ率が高い背景には塩分が多い食事や、車に依存した生活による運動不足などが指摘されている。震災前も全国順位は10~15位を上下して、決して芳しくはなかったが、震災後は避難生活による生活習慣の変化やストレスなどが数値悪化に拍車を掛けた。 県は16年度から「健康」をテーマとした県民運動に取り組んでいるが、本年度の県政世論調査によれば県民の約8割が「知らない」と答えるなど、運動の浸透が改めて課題となっている。 運動は20年度までで残り2年余り。県は新しい推進組織をつくり県民への浸透を図る方針だが、実効性ある体制を整え、効果的な対策を打ち出すことが求められる。 もちろん健康づくりの主体は県民一人一人であり、食生活改善や運動不足解消に率先して努めることが肝心だ。その取り組みを県や市町村、関係団体はしっかりと後押しすることが重要だ。
全国の大舞台で強豪校を次々と打ち破っていく姿は、県民に大きな感動と力を届けてくれた。健闘に心から拍手を送りたい。 サッカーの第97回全国高校選手権で、本県代表の尚志は2011年度の第90回大会以来7年ぶりととなる2度目の3位に輝いた。 県勢として初めての決勝進出、そして優勝という大きな目標の達成は持ち越しとなったが、尚志の快進撃は本県の高校サッカーのレベルの高さを全国に強く印象付けた。選手たちには胸を張って地元に帰ってきてほしい。 尚志は、破竹の勢いで準決勝まで勝ち進んできた。1回戦は神村学園(鹿児島)を1―1の末のPK戦で制すると、2回戦は前回大会で敗戦を喫した東福岡に2―0で快勝して雪辱を果たした。3回戦は、前回覇者の前橋育英(群馬)に2―1で勝利。準々決勝は帝京長岡(新潟)に1―0で競り勝った。優勝候補を立て続けになぎ倒し、試合を重ねるごとにチームの勢いは増していった。 昨日の準決勝は、前々回覇者の青森山田を相手に3―3のシーソーゲームを展開し、PK戦の末に惜しくも敗れた。尚志はチームの持ち味であるパスサッカーを駆使し、FW染野唯月(いつき)選手はハットトリックを達成した。今大会屈指の好ゲームとして多くの人の記憶に残るだろう。 尚志は5年連続10度目の全国大会出場となり、常連校として広く知られるようになってきている。ただ、今回の県大会では準決勝、決勝は1点差の接戦となるなど、苦戦も強いられてきた。本県王者の地位を巡り、他チームとの争いは激しさを増している。 本県の高校サッカーのレベルアップを支えている取り組みの一つに、18歳以下のユース(U―18)を対象にした「高円宮杯JFA U―18サッカーリーグ福島」(通称Fリーグ)がある。毎年春から秋にかけて、レベルごとの3部に分かれて各チームが上位リーグへの昇格を目指してしのぎを削っている。今後も各チームが互いに切磋琢磨(せっさたくま)し合い、本県サッカー界全体の強化につなげていきたい。 尚志の全国大会での躍進には、Jヴィレッジ(楢葉、広野町)での合宿も大きな効果があった。 同施設は東日本大震災と原発事故後、廃炉の前線基地となっていたが、昨夏に施設全体のうち約8割が利用可能になった。今春には全面再開する予定だ。各チームが本県の恵まれた練習環境を有効に活用して本県サッカーのレベルをさらに一段押し上げ、念願の県勢初優勝を実現させたい。
親が子を安心して預けることができるよう安全の「質」を高め、二度と悲劇が起こらないようにしなければならない。 福島市にある認可外保育施設で昼寝中の1歳男児がうつぶせの状態で発見され、死亡した問題を受け、認可外保育施設を所管する県と中核市の福島、郡山、いわきの3市は3月末までに、全ての認可外保育施設を対象とした緊急点検を実施する。集中的な点検を通じて再発防止を目指す。 認可外保育施設は、児童福祉法に基づく認可は受けていないが、行政の指導を受けて運営されている。子どもの預かり時間などは施設ごとに多様性があり、行政などが設置している認可保育所の機能を補う、地域の「保育の受け皿」として利用されている。 点検の対象となるのは、企業内の保育施設などを含めると計162施設(県52、福島市36、郡山市51、いわき市23)に上る。県と中核市には、今春の新入所シーズンを前に全ての施設の安全点検を終了させ、子どもを預ける保護者の不安を解消することができるよう万全を尽くしてもらいたい。 内閣府の調べでは、2015~17年の3年間に全国の保育施設で発生した死亡事故は35件で、このうち全体の7割にあたる25件が昼寝などの「睡眠中」に発生している。25件のうち11件は「うつぶせ寝」の状態だった。事故防止対策を議論した政府の有識者会議は、子どもたちが寝ている時の安全に十分配慮するよう提言している。 今回の点検では、抜き打ちの立ち入りで、寝返りが自由にできない0~2歳児がうつぶせ寝になっていないか、施設の職員が定期的に子どもの睡眠状況を把握する体制ができているかどうかなどをチェックする。点検で不備が確認された場合には、その場で注意するだけではなく、実際に改善が認められるまで施設への指導を続けることで安全を確保すべきだ。 県によると、定期的な監査を除き、事故防止などの特定の理由で全県的な点検を行うのは初の試みという。県は、立ち入り点検の際に、市町村で認可保育所の指導を担当している職員に同行してもらい、安全確認の方法などの共有を図る仕組みも検討している。 今回の点検を契機に、認可保育所、認可外施設を問わず保育環境を向上させていくことが重要だ。保育士の人手が不足している現状を踏まえれば、センサーで子どもの呼吸や心拍数を感知できる機器の導入を行政が支援するなどして、効果的な事故防止対策につなげていくことも欠かせない。
インフルエンザの流行が本格化しており、県は今季初の注意報を出した。一人一人が予防に努め、感染をストップさせたい。 県によると、県内の定点医療機関(83施設)から6日までの1週間に報告があった患者数は計1123人で、前週より758人増えた。1医療機関当たりの患者数は13・53人となり、「注意報」レベルとされる10人を超えた。 県が注意報を出すのは昨季に比べて1週間遅く、これまでのところ患者のほとんどがA型だ。インフルエンザは例年、1月末から2月中旬にかけて流行のピークを迎える。県は、今後1カ月以内に大きな流行になる可能性があるとみて注意を呼び掛けている。 地域別に1医療機関当たりの患者数をみると、県南が33・29人と最も多く「警報」レベルの30人を超えている。相双、会津、郡山市、いわき市、県北は注意報レベル、南会津、県中、福島市が1人以上10人未満の小流行の状況にある。 インフルエンザについては、厚生労働省も12月24~30日の患者数をもとに、全国で注意報レベルに達したと発表している。患者数はその後、年末年始の混雑や、企業と学校の再開で、さらに拡大しているおそれもある。 インフルエンザは、ウイルスが引き起こす感染症の一つで、感染力が強いことで知られている。感染すると38度以上の発熱や頭痛、関節痛などの症状が出る。重症になると命にかかわることがある。抵抗力の弱い高齢者や乳幼児は特に注意が必要である。 免疫力が弱ってくると、インフルエンザに感染しやすくなる。日頃からバランスの良い食事と十分な睡眠をとり、免疫力を維持することが重要だ。部屋の中を適度な湿度に保ち、小まめに空気を入れ替えることなどを心掛けたい。 インフルエンザは主にせきやくしゃみによる飛沫(ひまつ)で感染する。感染を防ぐために大切なのは「うつされない」「うつさない」という意識を持つことだ。外出後や食事前にせっけんと流水による手洗いを徹底するとともに、せきやくしゃみが出る人はマスクによる「せきエチケット」に努めたい。 インフルエンザの流行期間は長い。予防接種を受けそびれているような場合は、今からでも接種を受けることが望ましい。 県内では、インフルエンザのほかにも、RSウイルス感染症や咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎が流行または小流行している。いずれも感染症であり、予防はインフルエンザと同様、手洗いの励行が基本となる。
水田が本来持っている貯水機能を利用することで、大雨が降ったときなどに下流域の浸水被害を軽減させる「田んぼダム」の取り組みが、県内で始まっている。郡山市では大槻川流域の水田約16ヘクタール、須賀川市では笹平川流域の水田約10ヘクタールで、日大工学部と連携した実証試験が行われている。 田んぼダムを実施する地域では、水田の排水ますに、小さな穴を開けた調整板などの器具を取り付け、田んぼから流れ出る水の量を制限する。雨水は一時的に水田内にたまって少しずつ時間をかけて流れることになり、水路や河川の急激な水位上昇が抑えられるという仕組みだ。 浸水被害を防ぐ対策としては、河川改修や排水ポンプの整備などが重要な役割を果たしている。田んぼダムは、治水施設の防災機能を補う、減災対策の一環として導入の輪が広がりつつある。気候変動による雨量の増大が指摘されるなか、本県でも災害に強い地域づくりの選択肢として導入を検討する余地は十分にあるだろう。 田んぼダムは、一般に河川流域の6~7割の水田で対策に取り組んだ場合に効果が発揮されるとされている。全国でも先進的な取り組みが進められている新潟県の試算によれば、河川流域のほぼ全ての水田で対策を実施したと仮定すると、2011年の新潟・福島豪雨並みの雨が降ったとしても、浸水面積を半分程度にまで減らす効果が見込まれるという。 減災効果は、水田を管理する農家一軒一軒の協力なしに実現することはできない。新潟県では普及が進み、02年度に471ヘクタールだった取り組み面積は現在、約1万5千ヘクタールにまで増えている。本県で取り組みを進める際には、自治体がリーダーシップを発揮して集落単位などで協力を呼び掛け、合意形成を図っていくことが大切だ。 郡山市や須賀川市の取り組みを支援する日大工学部の朝岡良浩准教授(土木工学)は、対策を進める課題として「取り組むのは農家だが、被害が軽減されるのはより下流の市街地というギャップがある。農家が協力するメリットを増やすことが重要」と指摘する。 多額の費用はかからない対策だが、農家の費用や手間の軽減を図るため、自治体が支援体制を整えておく必要がある。同時に下流域の住民が、水田を維持する農家の尽力があって地域防災が前に進む現状を理解することが欠かせない。田んぼダムの導入が農村と都市部の結び付きを深め、地産地消などの波及効果が生み出される契機にもなるよう役立てたい。
悲惨な交通事故を根絶するためにあらゆる手だてを尽くしたい。 県内で昨年1年間に起きた人身交通事故は4592件で、前年より996件(18%)減少し、モータリゼーション初期に当たる1964~65年当時の水準となった。一方で、死者数は75人となり、前年に比べて7人(10%)増えた。 全国の交通事故発生件数は前年より9%、死者数も同じく4%減少した。死者数が前年を上回ったのは本県を含めて14県で、人口10万人当たりの死者数をみると本県は全国で16番目に多かった。 県内の交通事故は2001年をピークに減少を続け、死者数も比例するように減ってきた。しかしここ数年は、死者数が増減を繰り返す傾向にある。なぜ事故の減少が、そのまま犠牲者の減少につながらないのか。事故原因を詳しく分析して対策を立て、事故死者ゼロを目指さなければならない。 県警や警察庁によると、交通事故が減少を続けている要因としては、交通安全教育の浸透や、道路環境の改善、車の安全性向上、医療技術の進展が挙げられる。 このうち車の安全性に関してはシートベルトやエアバッグの装備に加えて、近年は自動ブレーキなどを搭載した「先進安全自動車(ASV)」が増えていることも寄与しているとみられる。 事故の発生と犠牲者をさらに減らしていくためには、ASVの普及が望まれるが、運転者、同乗者を問わず誰もがすぐに実践できる対策として、シートベルトの着用徹底を改めて確認し合いたい。 県警によると昨年、車に乗っていて亡くなったのは37人で、ベルト非着用は12人だった。県警はこのうちの半数はベルトを着けていれば助かった可能性があるとみている。一人一人が事故防止と安全確保について意識を高めることが痛ましい犠牲者をなくす近道であることを認識する必要がある。 高齢者の事故防止対策も引き続き力を入れなければならない。昨年、交通事故で亡くなった65歳以上の高齢者は46人で、前年より9人増え、死者全体に占める割合も54%から61%に増加した。 また、高齢者が運転する車が起こした事故による死者は31人で、全体の41%を占めた。県内の運転免許人口に占める高齢運転者の割合が25%であることを考えると、事故発生率が高いことが分かる。 高齢者は交通事故の被害者になるとともに、加害者になるケースも増えている。事故を一件でも少なくするための努力が社会全体に求められていることを銘記し、安全な地域づくりにまい進したい。
築き上げた伝統に新たな魅力を加えることで、より多くの人たちが踊りの輪に入り、県都を熱く盛り上げるまつりにしたい。 福島市の夏の恒例行事「福島わらじまつり」が、今年で50回の節目を迎えるのを機に刷新される。福島商工会議所や同市商店街連合会などでつくる実行委員会は、メインイベント「わらじ音頭」をリニューアルすることで、仙台七夕や青森ねぶた、秋田竿燈(かんとう)といった東北三大祭りと肩が並ぶよう育てていきたい考えだ。 同市ゆかりの音楽家大友良英さんが総合プロデュースを担当し、音楽や踊り、衣装などを一体的に設計する。大友さんは、同市出身の故古関裕而さんが作曲した「わらじ音頭」をベースに和太鼓を使った楽曲を新たに作る。新曲や振り付けは今春、完成する予定だ。 わらじまつりは、市民に長く親しまれている夏の風物詩であり、大切な観光資源でもある。実行委には、訪れた人たちが楽しさを共有でき、再び参加したいと思ってもらえるようイベント内容に工夫を凝らすことが求められる。 わらじまつりは市内の信夫山にある羽黒神社に日本一の大わらじを奉納する「信夫三山暁まいり」にちなみ1970年に始まった。わらじ音頭は来場者が中心市街地を踊り流すまつりのシンボルで、99年から現代風に編曲した「平成わらじ音頭」に変わり今も続く。 さらに現在は、ヒップホップ調の音楽に乗せて踊る「ダンシングそーだナイト」や、チームでわらじを引いて健脚を競う「わらじ競走」なども繰り広げられている。 昨年は2日間で約29万3千人が来場し、震災前の2010年の約28万人を上回った。実行委は今年、それをさらに上回る30万人の来場を目指している。そのためには、まつりの新たなファンを増やしていくことが欠かせない。 現在は事前登録制となっているわらじ音頭やダンシングそーだナイトに、だれでも飛び入り参加できるような仕組みをつくれば、来場者にまつりの楽しさをより実感してもらうことができるはずだ。 わらじまつりは、東日本大震災をきっかけに始まった「東北六魂祭(ろっこんさい)」に参加したことや、復興を支援する国内外のイベントへの出演が増えたことなどを背景に、知名度が高まっている。 今年6月1、2日には六魂祭の後継イベント「東北絆まつり」が同市で開かれ、新しいわらじ音頭が初披露される。絆まつりに訪れた人たちが8月のわらじまつり本番も訪れたいと思えるよう、魅力を広く発信する機会にしたい。
早め早めの対策を重層的に講じることで大雪による交通への影響を最小限に抑えることが重要だ。 国土交通省はこの冬から、大雪が予想される場合に、国道などを早めに通行規制して集中的に除雪する「予防的通行止め」を全国で導入した。昨冬に北陸地方などで数日間にわたる車の立ち往生が発生したことを踏まえての対応で、大雪時の通行止め時間をできるだけ短くするのが狙いだ。 予防的通行止めは、道路を管理する各地の国道事務所が、大雪警報などの気象情報や、道路に設置したカメラなどで把握した現場の状況を踏まえ判断する。長期に及ぶ車両の立ち往生は、日常生活や物流などに大きな影響を与える。適時適切な判断による通行止めと集中的な除雪に取り組み、天候回復後の早期解除につなげたい。 県内では、中通りの国道4号と国道13号、会津から浜通りまでを横断する国道49号、浜通りの国道6号のうち、過去に大雪で大渋滞や立ち往生が発生するなどした17区間が対象となる。 予防的通行止めについて議論した政府の検討委員会は、広域的な迂回(うかい)路の設定や、通行止めの際に車両がUターンしたり待機したりすることができる場所の確保などが必要になると指摘している。 通行止めを円滑に実施するためには国と、周辺の道路を管理する県、市町村の連携が欠かせない。車両の一時避難場所の確保では、沿線の「道の駅」や商業施設の協力も得る必要がある。国道事務所を中心に訓練や情報共有を進め、官民が連携して対策が取れるよう万全の体制を整えてもらいたい。 国交省は、予防的通行止めを実施する際は、報道機関を通じた広報、高速道路や国道沿いに設置した「情報板」などを通じてドライバーに注意を呼び掛ける方針だ。県内の国道事務所では、トラックやバスなどの関係団体に連絡することで、迂回路などの情報を伝える準備を進めている。 気象情報に基づき時間に余裕を持って通行止めを判断する場合には、広く周知することができるかもしれない。しかし、天候が急激に悪化して通行止めにする際は、情報伝達の速度と精度が問われることになる。防災メールや会員制交流サイト(SNS)を活用するなどし、より多くの運転者に情報を伝える仕組みをつくるべきだ。 県内に対象区間はないが、今冬からは全国の高速道や国道の13区間で、大雪時のタイヤチェーン装着が義務付けられた。予防的通行止めとともに、今冬から始まった制度の内容を理解しておきたい。
増える外国人旅行者の受け入れ環境を整え、「行ってみたい」「また訪ねたい」と思ってもらえる「観光県・福島」を目指したい。 1年間に日本を訪れた外国人旅行者数が昨年、初めて3千万人を超えた。最終的な数字は近く発表されるが、一昨年の2869万人を大きく上回る数字で最多記録を更新することになる。1千万人を超えた2013年から5年間で3倍という急増ぶりである。 政府は今後、東京五輪・パラリンピックが開催される20年に4千万人の目標達成に向けて、取り組みを加速する方針だ。和食や伝統芸能、国立公園に代表される豊かな自然環境など、日本観光の魅力をさらにPRしていく。 観光庁の宿泊旅行統計調査によると、昨年1~9月の県内への外国人延べ宿泊者数は7万7520人で、一昨年同期比で15%増となっている。福島空港への国際チャーター便が好調に推移し、通年でも一昨年の実績を上回る見通しだ。観光素材に磨きを掛けて特色をアピールし、この勢いを持続させていかなければならない。 日本政策投資銀行が昨年12月に公表した「東北インバウンド意向調査」の結果が興味深い。調査はアジア8地域と欧米豪4地域の海外旅行経験者を対象に行った。 それによると本県は、アジア、欧米豪の両地域で「認知度」が3割近くあり、東北の中では突出して高かった。東日本大震災と原発事故の影響とみられる。一方で、本県への「訪問意欲」も他県と同程度か上回る状況にあり、震災の影響が「負」の方向にだけ作用しているわけではないようだ。認知度と訪問意欲をいかに来県に結び付けていくかが課題となる。 ヒントは「宿泊地を決める際に重視する要素」を聞いた問いに対する答えにある。アジアと欧米豪に共通して多かったのは「主要観光地へのアクセス」で、誘客増に向けては空港や鉄道駅などからの「足」となる2次交通の確保が欠かせないことが分かる。 また、アジアでは無線LANなどの通信環境や温泉があること、欧米豪では歴史的な町並みや文化体験を楽しめ、言葉が比較的通じることなどが重要視されている。 東北地方を訪れる旅行者は、アジア、欧米豪ともに、訪日リピーター層が多く、日本に到着してから観光先や宿泊先を選ぶ比率が高い。訪日客全体のうち1%余という割合にとどまっている東北、そして本県への旅行者を増やしていくためには、訪日客の動向とニーズを詳しく把握し、確実に対応していくことが肝心だ。
子どもたちが夢を描き、その実現に立ち向かっていくための後押しをすることが重要だ。 子どもたちが将来、社会人として自立するための能力や意欲を養う教育を「キャリア教育」という。1999年に文部科学省の中央教育審議会が成長の段階に応じたキャリア教育の必要性を初めて提唱してから、今年で丸20年となる。その間、経済のグローバル化が急速に進んだ。さらにICT(情報通信技術)の発展やAI(人工知能)の進化などで仕事をめぐる環境は大きく変わりつつある。 仕事の多様化に伴い、子どもたちが働くことの意義を学ぶキャリア教育はより重要性が増している。学校側には、時代に合わせて指導内容を充実させていくことが求められる。 県内の多くの中学や高校では、生徒が地域の企業や役所で仕事を体験するインターンシップを行っている。インターンシップは生徒が自分の個性や適性を知るとともに、働く楽しさや苦労を実感できるという利点がある。 学校と企業、地域が協力し、希望する進路に沿って生徒がさまざまな職場体験ができるような体制を整えていくことが必要だ。 県内では、より一歩踏み込んだキャリア教育も始まっている。 楢葉中は本年度、全生徒が「社員」となった模擬会社を設立。楢葉町特産のユズを使ったワッフルやハンドソープなどを開発して都内で販売した。 西会津高は、地域の伝統的な食品の車麩(ふ)を加工したお菓子を作って「道の駅にしあいづ」で販売したり、飲食店と連携して地元産ミネラル野菜や会津米を使ったメニューを開発したりするなど、地域活性化にもつながるキャリア教育を展開している。 これらの取り組みは、生徒たちが古里の良さを再認識することにもつながったという。生徒が主体的に関わることができるキャリア教育をさらに広げていきたい。 近年、若者の早期離職が社会的な問題になっている。福島労働局によると、2017年3月に卒業した県内の高卒者が就職後1年目で離職した割合は17.2%で、全国平均を0.1ポイント上回った。思っていた仕事の内容が実際とは違っていた「ミスマッチ」などが要因とみられている。 子どもたちの職業観を育むには学校だけではなく、家庭での取り組みも欠かせない。普段から子どもと将来の夢を語り合ったり、仕事のやりがいを伝えたりすることで、働くことへの意識を高めていくことが大切だ。
将来の社会基盤を支えるロボット産業の振興を通じて、県内企業の活力を生み出していきたい。 県が整備を進めるロボット実証拠点「福島ロボットテストフィールド」(南相馬市、浪江町)は今年、研究開発の中核となる本館などの主要施設が完成する見通しだ。物流分野での活用が見込まれるドローンや災害対応ロボットの実験施設として利用される。 県は、ロボット産業を東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの産業再生の柱の一つと位置付け、2015年度から振興に取り組んでいる。県には、研究機関や企業などに拠点の利活用、拠点近くへの事業所進出を呼び掛けるなどして、本県経済への波及効果を最大限に引き出してほしい。 同拠点や周辺の「福島浜通りロボット実証区域」に指定されたダムや工業団地では、さまざまなロボットの実験が行われている。県によれば、ドローンの飛行テストなどで年間延べ4千人超の研究者らが浜通りを訪れているという。 ロボットの実験中には、機器の調整や故障への対応などが必要になる。現場での機器改良などに県内企業が関わることができれば、最先端のロボット開発に携わる技術者らと関係を築くチャンスになる。完成した拠点を県内企業が県外のロボット産業の関係者と結び付き、部品納入など将来の経済交流につながっていくような場として機能させることが重要だ。 ロボット産業への参入を検討する県内企業は17年5月から「ふくしまロボット産業推進協議会」をつくり互いの連携を深めている。活動の一つに、会員企業が専門家に依頼し、自社で持っている技術の中から、ロボット産業の関係者に売り込めそうな技術を探し出してもらう事業がある。17年度は18社で技術の掘り起こしが進んだ。 ロボット産業は、災害対応から介護支援に至るまで対象とする分野が幅広く、さまざまな部品や技術が必要とされている。県や協議会などが連携し合うことで、県内企業がそれぞれが持っている強みを生かしてロボット産業に関わり、成長していく流れを確かなものにしていかなければならない。 産業振興に着手する前の13年度、県内のロボット製造業の製造品出荷額は約40億円、全国で15位だった。県は20年度の出荷額を100億円以上とする目標を掲げている。100億円を超えると、全国のトップ10入りも見えてくる。 県外からの企業誘致と、県内企業の新分野参入を組み合わせることで「ロボットは福島」と言われるような産業集積を実現したい。
激動といえる歴史を刻み込んだ平成の時代は天皇陛下の代替わりにより4月末で幕を閉じ、5月から新しい元号の時代に入る。歴史の大きな転換点を迎える今年は、未来を見据えて行動に移していくまたとない機会となろう。 少子高齢化による人口減少への対応が差し迫った課題となっている。本県は東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興という荷も背負う。重い荷をできるだけ軽くして次代に手渡すために力を合わせていきたい。 県は、人口ビジョンと創生総合戦略を2015年に作り対策に取り組んでいる。対策が功を奏せば193万人(15年)の県人口は、40年で162万人、60年で142万人までの減少で、歯止めをかけることができるという内容だ。 だが前途は険しい。例えば戦略では、女性が生涯に産む子どもの数(合計特殊出生率)を、40年には2・16に引き上げることを目指すが、17年は1・57と前年の1・59を下回り、13年から続いていた上昇傾向にブレーキがかかった。 出生率は、社会が子どもを産み育てやすい環境にあるかどうかを映し出す鏡のようなものだ。戦略は19年度で5年目の最終年度を迎える。出生率に関わる施策をはじめ、戦略に盛り込んだ人口減少対策と地方創生に向けた全ての施策を総点検し、戦略の実効性を向上させなければならない。 3月になれば震災と原発事故から丸8年となる。県全体を見れば復興は進んでいる。一方で、原発事故の風評は消えず、避難先で年越しをした人がまだ大勢いる。 21年3月の復興期間終了まであと2年。復興のまだら模様をなくすために総力を挙げなければならない。復興を遂げるまでにはまだ年月を要する。政府と東電にはさらなる政策推進と財源確保、第1原発の着実な廃炉などに責任を全うするよう重ねて求めたい。 確かな未来を次世代に引き継ぐためにいま何をなすべきか。 「フューチャーデザイン」という政策決定の手法がある。岩手県矢巾町(やはばちょう)が総合戦略の策定に採用して注目を集めた。現在は良くても100年後の人たちにとってはどうなのか。将来世代の気持ちになって意見を述べるグループと、現世代のグループが、それぞれの立場で議論し意思決定する手法だ。 言わば、未来を「他人ごと」ではなく「自分ごと」として捉え、最善策を導き出す方法である。長期的な課題を数多く抱える本県においても、より有効な政策や施策を作るために応用できるだろう。 「人生100年時代」でもある。多様な視点から、柔軟に考え、果断に実行するという姿勢をみんなで共有し、新しい時代への第一歩を踏み出す実のある年にしたい。
2018年もいよいよ大詰め、あと2日間を残すだけになった。 今年は東日本大震災と東京電力福島第1原発事故後にまいた復興の種が実を結び始めていることを実感させるニュースが相次いだ。新しい時代に向けた歩みをさらに力強いものにしていきたい。 全国植樹祭が天皇、皇后両陛下をお迎えして南相馬市で開かれ、約8千人の参加者が「育てよう 希望の森を いのちの森を」を胸に緑豊かな県土の再生を誓った。 植樹祭の開催が固まったのは、震災の傷痕がまだ深く残る12年のことだった。震災以降、東北の被災地で開催されたのは初めてで、復興が進む本県の姿を全国に発信することができた。 県内の蔵元は、全国新酒鑑評会で19銘柄が金賞を獲得し、6年連続で「日本一」に輝いた。これまで最多だった広島県の「5年連続」を塗り替える快挙で、県産清酒のブランド力は一層高まった。国内外への売り込みを強化し、「酒どころふくしま」のファンを増やしていきたい。 「復興五輪」として20年に開かれる東京五輪・パラリンピックの聖火リレーが、本県から出発することが決まったのも朗報だった。 本県では、野球・ソフトボール競技も行われる。より多くの県民が関わることができるような仕組みづくりなど準備を進め、五輪開催の機運を高めることが大切だ。 五輪で活躍が期待されているバドミントンの桃田賢斗選手(富岡高卒)は、世界選手権の男子シングルスで金メダルを獲得した。 全日本合唱コンクール全国大会では、郡山高と郡山五中が「日本一」になるなど「合唱王国ふくしま」は今年も健在だった。 県政関係では、任期満了に伴う知事選が行われ、現職の内堀雅雄氏が再選された。しかし選挙戦は共産党を除く与野党相乗りの構図もあって論争は盛り上がらず、投票率は過去2番目の低さだった。 東京電力が福島第2原発の廃炉を表明、帰還困難区域では復興拠点の除染作業が6町村全てで始まるなど進展がみられるが復興は道半ばだ。県政のかじ取り役として活力ある県づくりに挑み、県民の負託に応えることが求められる。 夏には気象庁が「命に危険がある暑さ。災害と認識している」と表明するほどの猛暑に県内も襲われた。11月以降は火災による犠牲者が相次いでいる。災害や事故には十分に用心したい。 震災と原発事故から8度目の年越しは、平成最後の年越しでもある。新たな年が喜びと輝きにあふれる年になることを願う。
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