main menu
サイト内検索
ログイン
ユーザ名:

パスワード:



パスワード紛失

新規登録
OpenIDログイン

OpenIDを入力

mixi Yahoo! JAPAN Google BIGLOBE はてな livedoor エキサイト docomo ID

ツッCOM

切り抜き詳細

陸奥新報/2019/7/30 10:06
http://www.mutusinpou.co.jp/index.php?cat=2&一戸謙三の特別展「詩業を通観する貴重な機会」

一戸謙三の特別展「詩業を通観する貴重な機会」

 詩人・一戸謙三の生誕120年、没後40年にちなんだ特別展が、県近代文学館(青森市)で開かれている。
 長らく本県詩壇をけん引した一戸。一般には「弘前(シロサギ)」をはじめとした津軽方言詩で知られ、方言詩では高木恭造と並ぶ代表的な存在だ。「麗日(オデンキ)」は中学校の国語教科書に取り上げられた。工藤哲彦さんによる「弘前」の版画作品をあしらった弘前市立郷土文学館のクリアファイルも好評と聞く。
 郷土の文学者にスポットを当てた展覧会で、関連人物として一戸が登場する機会は多い。だが、本展の会場に足を踏み入れると、今まで一戸謙三の何を知っていたのか―と自戒させられる。
 若い頃のモダンな叙情詩にせよ、その後の方言詩にせよ、表現スタイルは、その時々の社会情勢などに正面から向き合ったゆえの、思索の変遷と苦悩の帰結であったことに気付かされる。同時に、スタイルに関係なく通底していたのは、津軽の風光と気質だったように映る。
 同展は一戸の詩業を通観できる貴重な場である。郷土に大きな足跡を残した先達を知る機会は大切にしたい。
 同展の関連事業として開かれた第1回文学講座の講師は、一戸の生地と同じ黒石市の出身で北海道立文学館館長の工藤正廣さんが務めた。ロシア文学者・詩人でもある工藤さんは「金魚ねぷたコ」など自作の津軽方言詩を朗読。その発音や抑揚は、独特な自筆による詩作品をほうふつとさせると同時に、一戸へのオマージュでもあった。
 その工藤さんは講演や同展図録で、津軽方言、特に話し言葉としての津軽弁の「共通の現代日本語にない」豊かな表現力とその存在意義を強調し、「それらをいかに自分の文学の中で膨らませられるか。それを発表すれば、日本を考える外国人たちも読んでくれる」などと、その将来性に期待を寄せた。
 戦前に展開された、高木の詩集「まるめろ」をも巻き込んだ津軽方言詩をめぐる賛否論争を踏まえると、工藤さんの指摘は文字通り隔世の感がある。同時に、こうした“風雪”をくぐり抜けてきた表現に、受け手として「言葉を守る」覚悟で臨んでいたかを自問させられる。
 この日の講座では、孫の一戸晃さんの提供で、謙三本人が晩年に朗読した「弘前」などの録音も聴くことができた。文面の高らかな古里礼賛とは対照的とも言える、「ヨーロッパの詩の読み方」(工藤さん)独特の抑揚が印象的であった。同詩が世に出た1936年当時の一戸の朗読も聞いてみたいと思った来場客も少なくあるまい。
 津軽方言詩を除く作品とその位置付けは、8月18日の第2回文学講座で中嶋康博さん(岐阜女子大学職員、詩人)が詳解する予定だ。ここではどのような一戸と巡り合えるだろうか。


コメント一覧


 

 

©太陽と風と水, 2011/ info@3coco.org  本サイトについて