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桐生タイムス/2019/3/26 16:05
http://kiryutimes.co.jp/editorial/15607/

「一書の人」が教えるもの

 3月は卒業の季節。積み重ねてきた努力の証しである卒業証書を手にした学生たちが、期待と不安を胸に抱きながら、新しい挑戦の舞台へと歩み出す。本紙の記事に紹介されていた高校や大学の卒業生たちの表情はどれもりりしく、そして頼もしい。
 情報全盛の時代である。通信技術の発達は目覚ましく、地球上ほぼどこにいても、大容量の情報をたちどころに、不特定多数とやりとりできる。こうした道具を自在に扱える若い世代が描くこれからの未来像とは、さてどんなものなのかと、ゆっくり語り合ってみたい気もする。
 炭素研究の第一人者で群馬大学工学部の教授だった大谷杉郎さんは生前、本紙に連載していた「くらしの随筆」の中で、「一書の人恐るべし」の言葉について触れている。自然科学を学ぶ上で、あの本この本と中途半端に読み散らすよりも、これと決めた名著1冊を縦横に読み解き、完全にマスターした人こそ、将来大きな仕事を成し遂げるだろうといった意味である。
 学術の世界ばかりの話ではない。情報端末には膨大な文字、写真、動画があふれ、目移りを誘う今の時代、私たちの日常生活においても十分通用する「一書の人」の指摘でもある。
 表現の機会が増え、発言する人が多くなればその分、他者の多様な考えや価値に触れる機会も増える。「いいね」でくくられる合意のサインにも、本当は無数の小さなひだが隠されているはずで、人の数だけ価値観が存在しているともいえる。絶対の価値観に縛られない、緩やかな相対化の時代の中で、「自分」はいつも揺らいでいる。
 一書を得ることは一つの価値体系を手に入れるということ。自らの考えの基礎を手にいれることだ。それは「本」ばかりとは限らない。取り組んできた研究や蓄積した知識、習得した技術なども、高度に情報化し流動化する社会の中で船を固定するいかりの役割を果たすだろう。
 学び直しの時代ともいわれる。長い歳月をかけて身に付けた知識や技術を、改めて見つめ返し、必要ならば磨きなおす。各大学で取り組みが進む社会人を対象にしたリカレント教育なども、その一例に違いない。私たちの身近にある生涯学習も、こうした流れの中にある。
 30年間なじんだ平成が間もなく終わり、新しい時代となる。若い世代に負けぬよう、一書を読む作業にいそしむのもいい。


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