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桐生タイムス/2018/8/14 16:05
http://kiryutimes.co.jp/editorial/15092/

言葉で伝え続けること 

 あすは終戦の日。73年前、昭和天皇は玉音放送で日本が敗れた旨を国民に語り掛けた。弊社が出版した「桐生彩時記」の8月15日のページには、受信環境の決してよくない中、正午からの放送に耳を傾けた当時の市民の姿が描き出されている。
 桐生市役所では職員らが本庁議事堂に集まり、放送を拝聴した。その際、桐生工業専門学校(現群馬大学理工学部)の配属将校から市長になった現役陸軍少将の広瀬勝滋は、玉音に感極まって卒倒したという。桐生工専では音声がよく聞き取れず、校長の西田博太郎は、陛下が国民にがんばれと伝えているのだろうと推察し、万歳三唱した。
 桐生中学校(現桐生高校)では、鉄道予備隊の兵隊たちとともに生徒が放送を耳にした。その後、「兵隊は校庭に穴を掘り、秘密書類を2日間焼き続けた」と、歳時記には記されている。
 個人の体験や記憶は、言葉として発信されることで、そこにいない他者と共有され、共同体の知恵や財産となる。日本人だけで310万ともいわれる命が奪われた第2次世界大戦である。戦争という、生の本能とは逆行するような状況の中で、かけがえのない人を失い、故郷から引き離され、理不尽さに苦しんだ人びとが、73年にわたり幾千もの言葉を発し続けてきた。
 そこには戦争の実像と本質が含まれ、二度と戦争を起こしてはならないというメッセージが刻印されている。発信のある限り、戦後は終わらないはずだ。
 おなじ人間という種の間で、多くの命を奪いあう戦争という行為がなぜ起こるのか。霊長類学者の山極寿一さんは著書「暴力はどこからきたか」の中で、言葉の出現と土地の所有、死者につながるアイデンティティーの創出が、大量殺戮を可能にしたのではないかと指摘している。
 言葉によって人間は空想を膨らませ、時空を超えて結びつき、本来つながりなどないはずの幻想の共同体を生み出す。それが農耕社会という新しいシステムや民族という概念の誕生と相まって、版図を大きくし、戦争へと至ったのではないか。
 一方で言葉は、個人が経験した苦しい体験を記録し、共有化を図り、同じ過ちを繰り返さずに済むよう、周囲や次世代へと伝えるための道具でもある。
 あらゆる道具と同様、言葉にも二面性がある。体験や出来事を記録し、伝えることの意味について、改めてかみしめたい。


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