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信濃毎日/2020/11/15 10:05
https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20201115/KT201113ETI090008000.php

考ともに/熊の大量出没/すみ分ける努力続けたい

 事態は明らかに深刻化している。新型コロナウイルスや地球温暖化のことではない。熊だ。
 環境省がまとめた今年4〜9月の全国集計によると、人が目撃した熊の出没数は1万3670件、人身被害は20道県の86人に及ぶ。4457頭が捕獲され、4218頭が捕殺された。
 出没数は過去5年の同期間比で最多だ。民家や商業施設といった人の生活空間への侵入が目立つ。日常の脅威になりつつある。
 たくさんのツキノワグマが捕殺された2006年、同僚と熊の問題を追いかけたことがある。
 半世紀以上も3千頭を超えなかった年間の捕殺頭数が、その年は4200頭を上回った。県内では2人が死亡、16人が重軽傷を負う人身被害があり、各地で農作物も荒らされて、住民の不安や怒りが高まっていた。
 現場から見えてきたのは農林業の衰退や里山の荒廃、地域の高齢化だ。駆除だけでは解決しないと考え、共生への議論や実践を積み重ねようと呼び掛けた。
 あれから14年。数年に一度の周期性があった人里への出没は頻発するようになった。問題が起きるたびに熊と人のすみ分けの重要性が叫ばれるが、なかなか実現に至らない。どうすればいいのか。
   ◇
 「人里に近い里山への熊の定着が完了してしまった」。北佐久郡軽井沢町で町の委託を受けて熊の保護管理を担うNPO法人「ピッキオ」の田中純平さん(46)は、今の状況をこう見る。
 若い熊が、餌になるドングリ類の豊凶にかかわらず人里に姿を見せている。「山に餌がないからというより、近くにすみかがあるからと考えた方がいい」と言う。
 熊の生息拡大は、環境省の調査でも明らかだ。00〜03年度は山間部に集中していたが、10〜17年度は人里近い平野部や海沿い、都市部でも確認された。
 すみ分けの境界をつくる農作業や山仕事といった人の活動が、近年一段と衰えたことが大きい。河川敷や市街地に緑地ややぶが増える一方で、森は急増するニホンジカに食い荒らされ餌となる植物が減っているとの指摘もある。
 山から押し出された若い熊が、入りやすくなった人里近くに居場所を探すのは当然の成り行きだ。何も対処しなければ、人を怖がらなくなるのも不思議ではない。
 人口減少が進むと、熊はさらに人の気配が薄れた街場へと入り込む。気候変動による災害と同じレベルで備える必要はないか。
 熊を引き寄せない街づくりや獣害を想定した防災訓練を考えてもいい。熊を含めた野生動物をどう管理し地域をどう守るか、もっと広く検討されるべきだ。
   ◇
 日本には古来、熊と向き合いながら生きてきた人たちがいる。伝統的な熊猟を今に伝える「マタギ」だ。山の神様を畏れ、熊を授かりものとして敬う。
 秋田マタギの血を引く下水内郡栄村の福原和人さん(58)は「マタギだからではない。山で生きる人は根っこに同じ観念を持っている」と強調する。
 自然の過酷さを常に意識し、覚悟して山や熊と向き合う。いただく命はおろそかにしない。熊との緊張関係を保つ暮らしの底流には地域が受け継ぐ精神がある。
 目的や方法は異なるが、軽井沢町でピッキオが取り組む熊の保護管理にも通じる部分がある。
 捕獲した熊に発信器を付けて行動を追跡し、人里に近づく熊を突き止めて徹底的に追い払う。繰り返す中で、捕殺が必要な被害を及ぼす熊だけを限定していく。
 住民からの相談を24時間いつでも受け付け、駆けつける体制も確立。町内にある4小学校の全ての学年で、熊について学びながら地元の自然の豊かさや厳しさを知ってもらう機会も設けている。
 ピッキオの田中さんは、専門家が地域に根ざして活動できるかがすみ分けを築く鍵だという。そのためには人材や資金とともに地域の理解と協力が欠かせない。
 子どもたちへの働きかけは「家族で話し合ってもらうことで、熊と生きている意識を地域に広げたい」と思うからだ。
 日本学術会議は昨年、主にシカの生息拡大を踏まえて、人口縮小社会における野生動物管理のあり方を環境省に提言している。国と自治体が連携した科学的データの集積、専門家の育成と地域への配置などが柱だ。
 自然環境や気象条件、野生動物の生息分布は、地域によって異なる。国や自治体は提言を基に議論を深め、住民と現状認識を共有しながら地域に合った共生のあり方を模索してほしい。
 それぞれの役割を明確にして、人が努力し続けてこそ、熊とのすみ分けがあると考えたい。
(11月15日)


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