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産經新聞/2021/1/14 6:00
https://www.sankei.com/column/news/210114/clm2101140001-n1.html

コロナと防災/命と暮らしを守り抜こう/大震災の記憶と教訓忘れるな

 新型コロナウイルスの感染拡大が急激に深刻化するなか、日本列島は強い寒気による大雪や暴風に再三見舞われ、各地で被害が出ている。
 政府、自治体と国民は今、総力を挙げてコロナと戦わなければならない。コロナ対策に関心を集中するのは当然だが、命と暮らしを脅かすのは新型コロナウイルスだけではない。
 ◆ためらわず避難行動を
 この3月で、東日本大震災から10年になる。平成30年の西日本豪雨をはじめ、近年は豪雨や台風による災害が相次ぎ、昨年も7月の九州南部豪雨で熊本県を中心に多くの犠牲者が出た。
 コロナとの戦いは厳しく、長期戦も覚悟しなければならない。だからこそ、地震、津波や豪雨など自然災害の脅威は一時も忘れてはならない。コロナからも自然災害からも命と暮らしを守り抜く。国民一人一人がその覚悟を持ち、災害への備えを徹底したい。
 1年近くになるコロナ禍での日常で、「多くの人が集まる場所は極力避けたい」という意識が、国民に根付いている。人の移動と接触の最小化は、感染症対策の基本である。
 しかし、災害時にはこの意識を捨てなければならない。
 東日本大震災では大津波による犠牲者が1万8千人を超える。津波に限らず、豪雨や台風による洪水、土砂崩れなど水の猛威から命を守る手立ては「避難」以外にはない。感染症を恐れて避難をためらってはならない。
 安全な避難先には必然的に人が集まる。コロナ禍ではもちろん、そうでなくても、できる限りの感染症対策を行うべきだ。
 一方で、被災者が互いに寄り添い、支え合うことは、生きる力になる。避難生活を支え、復旧を進めるには、多くの人の助けも要る。人の移動と接触を避けてばかりでは災害を乗り切れない。
 昨年7月の九州南部豪雨では、熊本県の被災地復旧を支援するボランティアが、県内在住者に限られた。9月に「特別警報級」の台風10号が九州に接近した際は、コロナ対策の人数制限で定員オーバーになった避難所や、住民が別の避難所への移動を求められた事例もあった。
 「苦渋の決断」であろう。その苦渋を持ち越してはならない。
 コロナ禍でもボランティアを広く受け入れるには、どうすればいいか。住民が迷わず、全員が避難できる態勢を築き、周知を徹底することも求められる。これらの課題は、全国共通のものだ。
 コロナ対策か防災かの二者択一ではなく、「命と暮らしを守り抜く」の一択で、最善を尽くさなければならない。
 ◆千年先まで伝承したい
 コロナ禍でも自然災害の怖さを忘れてはならない。同じ理由で、発生から10年になる東日本大震災の記憶と教訓を、埋もれさせてはならない。
 死者  1万5899人
 行方不明者 2527人
 震災関連死 3767人
 どれだけ月日が流れても、命の重さは変わらない。今も2527人もの行方不明者がいる現実を、忘れていいはずがない。
 東北地方の津波被災地では、大震災の伝承施設が各地に建てられている。津波の怖さ、避難の大切さを再確認し、大震災を知らない世代にも伝える施設の意義は大きい。ただし、伝承は被災地と被災者だけの課題ではない。
 平成23(2011)年3月11日に起きた巨大地震と大津波による未曽有の災禍を語り継ぎ、教訓を後世に伝えることは、生き残ったすべての者の責務である。
 大震災の年に生まれた子は、今年10歳になる。大震災を直接知らない世代が確実に増えていく。
 家族でも親類でも、近所の子でもいい。10歳の子を具体的に思い描いて、大震災の記憶と教訓を自分の言葉で伝えることを考え、できれば実践してほしい。
 関東以西の太平洋岸では、南海トラフ地震の津波対策に結び付くだろう。国土に対して海岸線の長い日本列島のすべての住民は、大震災の記憶と教訓を共有し、伝承を担うべきである。
 東日本大震災は「千年に一度」の災害といわれた。千年後の命も津波から守りたい。
 そのために最も大事な一歩を担っていることを、大震災から10年の節目に心に刻みたい。


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