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読売新聞/2020/8/6 6:00
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20200806-OYT1T50003/

原爆忌/惨禍の記憶を途切れさせまい

 原爆の惨禍について発信を続け、核軍縮に粘り強く取り組む。唯一の被爆国である日本に課せられた責務である。
 広島は6日、長崎は9日に75回目の原爆忌を迎える。被爆直後に「75年は草木も生えぬ」と言われた絶望的な状況から復興した。節目の年の式典が、新型コロナウイルスの感染防止のために規模が縮小されるのは残念だ。
 広島では被爆に耐えたピアノが演奏される。平和への願いを込めた音色を世界に届けてほしい。
 オバマ前米大統領の2016年の広島訪問に続き、ローマ教皇フランシスコが昨年、長崎と広島を訪れた。国内外の多くの人が被爆の実相を知ることが、核廃絶の第一歩となろう。この流れをコロナ禍で止めないようにしたい。
 昨年度の入館者が過去最多だった広島平和記念資料館は、約3か月間臨時休館した。今は、被爆者の講話の動画配信などにも力を入れている。見た人が被爆地を訪れたいと思うよう、資料のデジタル化や多言語化を進めるべきだ。
 大切なのは、惨禍の記憶の風化を防ぐことである。
 被爆者の平均年齢は83歳を超えた。証言や手記、被爆資料の収集や伝承者の育成を急ぎ、後世に受け継いでいかねばならない。
 広島県立福山工業高校の生徒は仮想現実(VR)技術を使い、被爆時の爆心地の様子を体験できる映像を制作した。元住民の証言を集める中で、原爆の恐ろしさをこれまで以上に実感したという。
 人工知能(AI)を活用し、戦時下の日常を撮影した白黒写真のカラー化に取り組む学生もいる。若い世代で戦争の歴史を身近に捉える意識が広がれば、記憶の継承は着実に進むだろう。
 読売新聞などが実施した被爆者アンケートでは、約9割が核廃絶が進まない状況に焦りを感じ、核兵器の使用を懸念する人も4割を超えた。国際政治の厳しい現実を反映しているといえる。
 米国とロシアは核兵器の改良を競い、核使用のハードルを下げようとしている。中国は米露との核軍縮協議への参加を拒み、北朝鮮は核開発を加速させている。むしろ核廃絶に逆行する状況だ。
 非核保有国の一部は核軍縮の停滞に苛立(いらだ)ち、核兵器禁止条約の発効を目指している。核軍縮を建設的に議論できる安全保障環境を整えることが先決ではないか。
 日本は核兵器の非人道性と抑止力としての役割の双方を理解する国として、核保有国と非保有国のパイプ役を務めねばならない。


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