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読売新聞/2020/8/6 6:00
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20200806-OYT1T50000/

デジタル通貨/実現には課題の検証が必要だ

 世界各国で中央銀行によるデジタル通貨発行の研究が進んでいる。
 日本銀行は新部署を設けて、検討を本格化させた。欧州中央銀行(ECB)など五つの中央銀行との共同研究もスタートしている。世界の流れに乗り遅れないよう、課題の検証を急いでもらいたい。
 中央銀行のデジタル通貨は、紙幣や硬貨を電子データに置き換えて、やりとりするお金のことを指す。民間企業が発行する電子マネーと異なり、どこでも使えるようになるのが特徴だ。
 普及すれば、現金の保管や輸送、決済のコストが減る。企業経営の大幅な合理化が期待できる。消費者にも、支払いや送金が迅速になるなどの恩恵がある。現金に触れないため感染症対策に役立つ。
 円滑に導入できれば、社会のデジタル化が加速しよう。
 政府は「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)に、実証実験などの検討を明記した。
 共同研究に加わっていない米連邦準備制度理事会(FRB)も検討の必要性は認めている。政府・日銀は、米国を含め各国と情報交換を重ねることが大切だ。
 注視すべきなのは、「デジタル人民元」発行の実証試験に入った中国の動きである。
 国内での利用から始めるが、巨大経済圏構想「一帯一路」の関係国への資金支援に活用するとの見方がある。他国に先駆けて発行し、基軸通貨のドルに対抗する狙いがあるのだろう。
 スウェーデンの中央銀行も実験に着手し、カンボジア国立銀行は昨年、試験的に発行した。
 デジタル分野は動きが速い。対応が遅れれば、日本が一気に取り残される懸念がある。
 一方で、発行に向けては問題点や解決すべき課題が多い。
 スマートフォンでのやりとりが考えられるが、スマホを持たない人にはどう対応するか。地震などの災害で電源が失われた場合に使える仕組みをどう構築するか。
 決済が電子化されれば、すべての取引情報を日銀に把握される可能性がある。プライバシーへの配慮が大きな論点となろう。
 中央銀行のデジタル通貨が定着していけば、銀行預金が大量に移行し、銀行の経営を圧迫するとの指摘がある。通貨システム全体への影響はどうなるのか。サイバー攻撃への備えも重要だ。
 政府・日銀は、技術開発にあたる民間企業とも協力し、様々なケースを想定した対応策について論議を深める必要がある。


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