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中日/東京新聞/2020/5/26 8:00
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020052602000163.html

緊急宣言の全面解除/新しい日常へ進むには

 自粛と我慢を強いられた長いトンネルを抜けた。しかし、その先は元の居場所ではない。これからは新型コロナウイルスと「共存」する社会になっていく。不安を抱えつつも前に進むしかない。
    ×     ×
 政府は東京、神奈川、千葉、埼玉の首都圏四都県と北海道の緊急事態宣言を解除した。
 感染者は減り、医療態勢も余力がでている。四月七日の発令から七週間後の全面解除となった。
 しかし、神奈川県と北海道は、政府が示した宣言解除の基準である新規感染者数「人口十万人当たり〇・五人程度以下」を依然上回る。東京都は二十四日に公表した感染者十四人のうち九人は感染経路が不明だ。長引く活動自粛によるこれ以上の経済への影響は避けたいのだろうが、解除に前のめりになってはいないか、疑問が残る。
 先行して解除された愛知、岐阜両県など中部圏や関西圏同様、感染症対策と、学校や仕事など社会経済活動の両立をどう実現するのかが、直面する大きな課題だ。
 再び感染が広がれば、再度、緊急事態が宣言され、活動が規制される事態を想定せねばならない。その際、緊急事態地域に再指定する基準を示さなければ、国民の理解は得られまい。
 分かりやすい基準があれば、流行を避けるため、個々人が行動を決めやすくなる。
 ところが政府は、この基準さえ明確に示していない。今回の緊急事態宣言解除も含め「総合的に判断した」と言うが、ならば政策決定のプロセスを公表すべきだ。
 科学的提言を行う専門家会議は政府の政策決定に影響力がある。だが、公開される議事録は概要のみで、詳細な記録は作成する予定すらないという。判断の前提となった考え方やデータは、他の専門家が決定過程を検証する際、必要な情報にもかかわらずだ。
 厚生労働省は非公開理由を「自由な議論を阻む」としているが、専門家会議の委員の一人は「公開を断るようなことはしていない」と説明する。
 政府は三月、新型コロナ感染症への対応を行政文書管理ガイドラインに基づく「歴史的緊急事態」に初めて指定、会議などの記録作成を義務付けたはずだ。
 二〇〇九年の新型インフルエンザ流行時も、専門家の会議が設置されたが、このときの議事録も公開されていない。
 流行終息後に政府の対応を検証した有識者会議の報告書は、意思決定の議論は可能な限り公開することの重要性を指摘している。その教訓は今回も生かされていないのではないか。
 終息への見通しが立たない中、経済活動の停滞による解雇や雇い止めは一万人を超えた。生活保護の申請も増え始めた。国民への給付金や事業者への融資など経済支援の拡充がさらに重要になる。
 二十七日に閣議決定される二〇年度第二次補正予算案には、感染症に対応する医療機関や、高齢者のケアを続ける介護事業者への追加の支援策が盛り込まれる見通しだ。現場の疲弊を考えればより早期に手当てする必要があった。
 すでに決まった給付や融資も申請手続きが複雑だったり、申請しても入金の遅れが指摘される。政府は批判を受け止め、国民生活の立て直しに全力を挙げるべきだ。
 一方、宣言解除により日常が動きだす。自治体は自粛緩和の手順をそれぞれ公表した。政府は感染防止策として「新しい生活様式」の定着を求めている。
 マスク着用や手洗いを徹底し、人との距離を保つ。食事は持ち帰りや配達を活用、食卓は対面でなく、横並びで座る。就労はテレワークや時差出勤を推進する、などだ。店舗も入場制限や消毒、換気など多くの対策を求められる。
 確かに、再流行を抑えるためには大切な取り組みではあるが、経済活動との両立は容易ではない。
 こうした生活習慣の奨励には違和感も覚える。個人の日常生活にまで、行政が介入することになりかねないからだ。
 無批判にすべて受け入れ、社会のルールになってしまうと、自ら考えて行動する機運が広がらないのではないか。そうなると少しでも守らない人がいると差別やバッシングが起こる。それでは殺伐とした日常になってしまう。
 人にはそれぞれ事情がある。他者を思いやる大切さこそ、新しい日常で共有すべきだろう。
 どんなに対策を講じても感染リスクをゼロにすることは難しい。だからこそ、リスクを下げる対策を個々人が考え、周囲の理解を得ながら進めるしかない。
 そのためには感染症に対する正確な知識が必要で、その情報を提供するのは政府の重要な責務であることを再認識すべきである。


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