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中日/東京新聞/2020/1/14 10:00
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020011402000158.html

週のはじめに考える/EU離脱のうめき声

 英国総選挙の結果が示したのは、欧州連合(EU)からの離脱の意思だけではありません。民意を探ると、苦境に陥る人々のうめき声が聞こえてくるようです。
 総選挙では、与党保守党がEUからの離脱を主張したのに対し、野党第一党の労働党は是非についての態度は明確にせず、再度の国民投票実施を訴えました。
 議席獲得政党が、ゲームのオセロのように、がらりと変わった一帯があります。英イングランド北中部です。
 「赤い壁」と呼ばれた労働党の牙城でしたが、保守党に次々と崩され、イングランド全体で議席の四分の一を失いました。
 石炭産業、工業がかつてのように振るわず、移民流入や失業への不安が広がっていました。
 日本で先月公開された映画「家族を想(おも)うとき」は、そんなイングランドのニューカッスルで生きる家族を描いています。実入りのいい仕事はなくなり、夫は職を転々とします。マイホームを持つためフランチャイズの宅配ドライバーとして独立する決意をし、借金をしてワゴン車を購入。本部の指示で一日十四時間、宅配で走り回ります。効率優先で、働く人同士の連帯もありません。
 妻も訪問介護の仕事をしていますが、移動時間は無給で、きつい勤務を強いられる割には収入は少ない。両親と触れ合う時間が少なくなった子どもは非行に走ります。
 精いっぱい、真面目に生きているのになんで−と、胸が締め付けられるような痛々しさです。
 八十三歳のケン・ローチ監督が貧困や格差の現実に怒り、引退宣言を撤回、現場で働く人たちへの取材を基に制作した、気合の入った作品です。
 働く人たちを追い詰めてきたのは英国の政治です。
 一九七九年に登場したサッチャー政権は新自由主義を掲げ、石油、電気、水道、航空機産業など幅広い分野に及んでいた国営企業を次々民営化し、低所得者や失業者らへの社会保障を削減。労組の弱体化を図りました。
 その後、労働党のブレア政権は「ニュー・レイバー(新しい労働党)」「第三の道」を標榜(ひょうぼう)し労組の影響力を弱めて中道化、失業者の就労を促すなどして社会保障削減をさらに進めました。
 経済が停滞していた「英国病」から脱し、規制緩和を進めたなどの成果はありました。しかし、過度な競争や効率優先による雇用環境悪化など、映画で描かれたような負の部分ももたらしました。
 若手ジャーナリスト、オーウェン・ジョーンズ氏は著書「エスタブリッシュメント」(海と月社刊)で、英政権の隠れた狙いを暴きます。エスタブリッシュメントは今はやりの言葉で言えば、「上級国民」でしょうか。働いても生活が楽にならないのは、エリート政治家、財界、政権の意をくむメディアなど権力を握る集団が、既得権益を守るシステムを作り上げた結果であるというのです。
 金融危機の際の銀行救済、国費によるインフラ整備などを例に挙げ、「富裕層のための社会主義」になっているとし、権力側は、国民の怒りが移民や生活保護受給者らに向くよう世論を誘導する、と指摘します。
 また、「労働党をはじめとする反エスタブリッシュメント勢力は国民に広がる不満と幻滅に対応しきれず、そこにできた空白をポピュリズム右派が埋める格好になっている」と分析します。
 困窮する人々の支持は本来、労働党に集まるはずですが、中道寄りに転じた後、コービン党首の下で主要産業の国有化など「先祖返り」を図ろうとして混乱し、EU離脱への対応もあいまいな労働党は信頼を回復できませんでした。
 その空白を埋めたのが、パフォーマンスたっぷりにEU離脱をアピールしたジョンソン首相だったのでしょう。
 グローバル化で激しさを増す競争、人間らしい生活より効率優先の働き方、広がる格差などは、英国だけの問題ではありません。
 本部から二十四時間営業を強いられたコンビニチェーンのオーナーなど、「家族を想うとき」が描くのは日本にも通じる現実です。
 ジョーンズ氏によると、エスタブリッシュメントらは「この道しかない」と主張し、反対意見を封じるそうです。これも、身近でもよく聞くせりふです。
 労働党の失敗を教訓に、エスタブリッシュメントの手から政治を取り戻す現実的で有効な手段を考えることも必要でしょう。
 今月末、EU離脱へと踏み出す英国。日本の閉塞(へいそく)を打開する処方箋を考えるためにも、行方に注目していきたいと思います。


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