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読売新聞/2020/1/14 6:00
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20200113-OYT1T50232/

東京五輪/一人でも多く祭典に関わろう

 ◆もてなしの心で新たな歴史を◆
 今年、五輪とパラリンピックが東京で56年ぶりに開催される。今回も、日本の歴史に新たな一ページが刻まれることになるだろう。
 真新しい国立競技場では元日にサッカー天皇杯決勝が行われ、11日にはラグビーの全国大学選手権決勝もあった。6万人を収容するスタジアムはほぼ満員となり、五輪本番に備えて、観客の誘導方法などを確認した。
 ◆共生社会目指したい
 1万8000人を迎える東京・晴海の選手村には、最高18階建ての宿泊棟21棟が完成した。共用通路は通常のマンションより30センチ広く、車いすの選手がすれ違える。白杖(はくじょう)の引っかかる段差もない。
 パラリンピックの選手たちも安心して利用できる。成熟した共生社会を目指した大会の理念を、実現することが大切である。
 3月からは、聖火リレーが始まる。各都道府県が、ゆかりの人をランナーに選んだのが見所だ。
 福島県須賀川市では、メキシコ大会マラソン銀メダリストの君原健二さんがランナーを務める。須賀川市は前回の東京大会のマラソンで銅メダルを取った円谷幸吉さんの故郷で、君原さんと円谷さんは親友だった。
 君原さんは北九州市在住だが、メキシコ大会を前に重圧で命を絶った円谷さんのために走ろうと、福島県に自ら申し込んだ。今年79歳になる君原さんがトーチを手に走る姿は、東日本大震災の被災地を勇気づけるに違いない。
 各地の高校生が、五輪やパラリンピックに関わっている。
 海外選手を受け入れるホストタウンの農業高校では、地元の食材を使った料理を選手に振る舞う準備が進んでいる。岐阜県の県立岐阜農林高校の生徒は、自分たちが収穫した米と特産の鮎(あゆ)を使った釜飯を用意するという。
 東京の都立工芸高校では、パラ陸上の「こん棒投げ」で使う用具を生徒たちが製作中だ。授業の一環で、ブナ材を木工旋盤で削り、ボウリングピンに似た形のこん棒に仕上げていく。3月には完成し、大会組織委員会に納品される。
 本番で使われたら、生徒たちの一生の財産になる。こうした取り組みが、日本全体で五輪の機運を高めることにつながるはずだ。
 ◆暑さと災害対策が鍵だ
 本番での課題は暑さ対策である。日よけテントに水や氷、冷風機が用意されるが、熱中症を完全に防ぐのは難しい。大会ボランティアや訪れる観客に、首やわきの下、足の付け根を冷やす最低限の応急処置を周知しておきたい。
 台風や豪雨災害への対処方針をあらかじめ考えておくことも重要だ。近年、天気予報の精度が上がり、鉄道の計画運休などが事前に発表されるケースが増えている。こうした場合は、日程の変更や無観客試合も想定されよう。
 競技ごとに、可能な対策を練り上げておかねばならない。
 輸送対策も重要になる。海外からの観客と通勤客が重なると、交通機関の混乱が予想される。企業は可能な限り、在宅勤務や夏季休暇の取得を推奨し、鉄道や道路の混雑緩和に協力してほしい。
 ロシアが、世界反ドーピング機関から、国際大会出場を4年間禁じられたことは、東京大会にも波紋を広げている。
 スポーツ界が薬物汚染と決別するために、違反国に厳しく臨むのは当然だ。ホスト国として検査態勢を整えねばならない。
 ◆本番に向け切磋琢磨を
 競泳の五輪代表に内定した瀬戸大也選手は、正月3日から水しぶきをあげた。本大会では、開会式2日後に、得意の400メートル個人メドレー決勝がある。「金メダルを取って日本チームの流れを作る」という決意が頼もしい。
 日本が世界トップ級にいるバドミントンは、女子ダブルスの代表2枠を巡って、三つのペアがしのぎを削っている。いずれも表彰台が期待できる選手たちだ。最後まで切磋琢磨(せっさたくま)して、ベストの状態で本番を迎えてもらいたい。
 東京都北区に昨秋、国立のトレーニング施設が新設された。車いす競技でも床が傷つかない。パラアスリートたちが心おきなく自らを鍛えていけるだろう。
 前橋市の運動場では、寒風の中、アフリカ・南スーダンの陸上競技選手4人がスパイク音を刻んでいる。自国には内戦の影響で練習できる施設がなく、前橋市が支援を申し出た。昨秋に来日し、日本人コーチの指導を受けている。
 午前中は日本語学校に通い、時には小学校を訪ね、給食や掃除に加わっている。こうした交流も競技に劣らぬ記憶となろう。


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