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毎日新聞/2019/12/3 4:00
https://mainichi.jp//mainichi.jp/articles/20191203/ddm/005/070/023000c

東西冷戦終結から30年/対立を繰り返さぬために

 米国のブッシュ(父)大統領とソ連のゴルバチョフ共産党書記長が東西冷戦の終結を宣言したマルタ会談から30年を迎えた。
 第二次世界大戦後のソ連の拡張政策と米国の封じ込め政策の対立は、世界を東西2陣営に分断し、一時は「核戦争」の瀬戸際に追い込んだ。
 民主政治と資本主義が独裁政治と共産主義に勝利し、世界が憎悪と恐怖から解放され、永久平和が訪れると信じられた歴史の転換点だった。
 ブッシュ氏は冷戦後の目指すべき「新世界秩序」をこう表現した。
 「法の支配が弱肉強食の論理に取って代わり、国々が自由と正義への共通の責任を認識し、強国が弱小国の権利を尊重する新しい世界」
 対立から協調へ――。その高い理想を世界は実現できただろうか。
 冷戦後の国際秩序の柱となった一つは国際協調主義だろう。
 イラクがクウェートに侵攻した湾岸危機では、国連安全保障理事会が朝鮮戦争後初めて一致して侵略に対抗し、本来の機能を取り戻した。
 地域紛争での国連平和維持活動(PKO)や地球温暖化への取り組みなど世界規模の課題に国連が主導的な役割を果たす機会は増えた。
 もう一つは、グローバリズムだ。人、モノ、カネ、情報が国境を越えて移動し、それを支える国際的な制度や機関が整備された。
 グローバル化によって多文化社会が生まれ、自由貿易により世界経済は繁栄し、相互依存が深まり、世界平和につながると考えられていた。
 これを主導してきたのが超大国の米国である。大国同士の紛争の危機は遠のき、開発途上国の貧困は冷戦時に比べて大きく減った。
 ただし、こうしたメリットの半面、デメリットも浮き彫りになったのが30年を経た世界の現状だろう。
 グローバル化のひずみは経済格差と移民への不寛容な風潮をもたらした。世界最大の移民大国の米国の分断はとりわけ深刻だ。
 グローバリズムへの反動からナショナリズムが世界のあちこちで噴き出し、協調の枠組みを揺るがす要因になっている。
 自由と民主主義を共有する先進国に迎えられたロシアがウクライナのクリミア半島を軍事的に掌握し、強権主義的な姿勢を目立たせている。
 冷戦後に台頭してきた中国が経済力と軍事力を蓄え、人工知能(AI)などを駆使した「デジタル独裁」が世界を脅かすようになった。
 新たな形の国家の融合と期待された欧州連合(EU)は通貨危機と難民危機で統合に亀裂が入り、英国の離脱決定へとつながった。
 冷戦後の世界を率いた米国も同時多発テロを受けて単独行動に走り、協調より「米国第一」を優先する。
 リベラルな国際秩序は傷み、核軍拡競争の懸念が再び世界に広がる。
 米中、米露の新たな大国の対立は「新冷戦」とも呼ばれる。だが、グローバル化した世界では冷戦時のブロック化や封じ込めは通用しない。
 網の目のように張り巡らされた相互依存の貿易体制を断ち切れば、自国の利益まで損なう。「鉄のカーテン」を下ろす隙間(すきま)はどこにもない。
 世界はより大きな歴史の転換点に立っていると認識すべきだ。
 21世紀の国際秩序を見通すのは難しい。だが、最も避けるべきは、大国が独自のルールを振りかざし、世界を混乱に陥れることだ。トランプ米大統領、習近平中国国家主席、プーチン露大統領はいずれも強権的だ。その懸念は消えない。
 大国が独善的な態度で振る舞えば、自由で公正な国際秩序は崩壊する。強国は弱小国を意のままにしようとするだろう。
 現在の国際秩序の源流は約100年前の第一次世界大戦にある。欧米や日本は国際連盟を創設し、不戦条約という平和の枠組みを構築した。
 第二次世界大戦や東西冷戦の対立を経験しながらも、軍縮や自由貿易体制など、国連や多国間による協力は強化されてきた。
 国際協調の維持は日本にとっても重要だ。果たすべき役割は大きい。
 同盟国である米国を基軸に中露とも良好な関係をつくろうとしている。大国が競争しながら国際社会で共存を図るよう促すこともできるだろう。
 地球規模の課題に率先して取り組む必要もある。日本は欧州などと協力して大国と小国をつなぎ、国際協調を揺るぎないものにすべきだ。


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