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産經新聞/2019/4/16 6:00
https://www.sankei.com/column/news/190416/clm1904160002-n1.html

ウッズの復活/人は再チャレンジできる

 ゴルフの祭典、マスターズで米国のタイガー・ウッズが復活の逆転優勝を果たした。実に14年ぶりの大会制覇、メジャートーナメントでも11年ぶりの優勝だ。
 これほど長いブランクを経ての完全復活劇は、世界のトップスポーツにおいても極めて希有(けう)な例だろう。涙のないタイガーの咆哮(ほうこう)に全米の、いや世界中のゴルフファンが大いにわいた。
 自身、「引退も考えていた」という奈落からの復活である。あきらめずに努力を重ねれば、その先に栄光が待つこともあり得るということだ。再チャレンジの成功は多くの人に受け入れられる。
 ウッズならではの奇跡なのかもしれない。だが、かつては圧倒的な実力で世界のゴルフ界に君臨し続けたウッズだからこそ、その落差は大きく、失意から立ち直ることは困難を極めたはずだ。
 2008年にメジャーの全米オープンを制した翌年、不倫騒動などのスキャンダルが噴出して多くのスポンサーを失い、豪快なスイングで負担をかけた膝や腰の故障が追い打ちをかけた。度重なる手術で一時は歩行もままならぬほどとなり、17年には薬物を服用しての運転で逮捕された。
 誰もが、タイガーは終わったと思った。トーナメントに復帰しても往年の輝きはなく、メジャータイトルの再獲得は自身も「想像さえできなかった」という。
 昔のウッズが、そのまま帰ってきたわけではない。
 最終日最終組で優勝を争ったイタリアのフランチェスコ・モリナリには、しばしばドライバーの飛距離で置いていかれた。だがウッズは「飛距離も必要だが、それ以上に攻め方の知識が重要だ。僕はそれをよく知っている」と冷静にモリナリを追い、抜き去った。
 最終18番ではボギーまで許される状況で強引に攻めることなく、計算通り1打差で逃げ切った。1997年のこの大会を史上最年少の21歳で2位に12打差をつけて制した当時と、43歳の現在のウッズとは、別人である。
 最も大きな違いは、当時は今は亡き父親に祝福され、今度は息子を抱き上げたことだろう。
 人は蘇(よみがえ)ることができる。
 ただしかつての姿を追うのではなく、何者かに変身しなくてはならない。これがウッズから受け取る、あらゆる分野に通じる教訓かもしれない。


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