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中日/東京新聞/2017/7/17 8:00
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017071702000143.html

海の日に考える/最後の秘境を見たい

 闇の中に広がる深海は人類にとって最後の秘境、地球最後のフロンティアといわれます。未知なるものがあれば探究せずにはいられないのが人間です。
 地球の表面の七割は、海で覆われています。平均すると、その広大な海の深さは三千七百メートルにもなるそうです。
 地球上をくまなく踏破し、利用してきた人類ですが、海の中に関する限り、進出できた領域はほんの一部にすぎません。つまり私たちの足元に広がる深海は、ほとんどが未知の世界です。
 例えば、はるか月面にも米国のアポロ宇宙船で降り立った計十二人が足跡を残しています。近年では国際宇宙ステーションに常時、人が滞在できるほど宇宙空間の利用は進んでいます。
 それを思えば、人間にとって深海は月より遠いところかもしれません。最も深い海、マリアナ海溝の最深部はチャレンジャー海淵(かいえん)です。その深さは水面下一万九百メートルほど。そこまで潜った人間は、まだ三人しかいません。
 米海軍が運航する潜水艇「トリエステ」で一九六〇年、初めて最深部に到達したのはドン・ウォルシュとジャック・ピカールの二人。その後は二〇一二年、映画監督のジェームズ・キャメロン氏が潜水艇「ディープシーチャレンジャー」でたどり着いただけです。
 冒険ではなく学術調査ということになれば、水深一万メートルの世界へは、まだ、無人探査機しか手段がありません。
 有人潜水調査船は日本、フランス、米国、ロシア、中国の五カ国に六千メートル級の計七隻。中国の「蛟竜(ジャオロン)」が一二年に七千メートルを超す潜航に成功するまでは、日本の「しんかい6500」が長らく最深記録を保持していました。
 深海探査は水圧との闘いだといいます。水深六千五百メートルまで潜れば、一本の指先に十人の大人を乗せるぐらいの圧力がかかる。生身の人間なら、もちろん、一瞬でぺちゃんこに押しつぶされます。
 人間の目で太陽の光を感じられるのは、海水の透明度にもよりますが、水深五十メートルぐらいまで。百メートルも潜れば、何も見えぬ闇が広がるばかりだといいます。
 その闇の中から、人間は何を見つけてきたのでしょう。
 各国が鉱物資源確保にしのぎを削る中、注目を集めてきたのが海底資源です。例えば熱水鉱床。海底火山活動のある場所で噴き出した熱水が冷やされる過程で、溶け込んでいた金、銀、レアメタルなどの各種金属が沈殿してできるものです。メタンハイドレートの調査も進んでいます。ただし海底資源には、地上へ運び出すまでのコストという問題が残りますが。
 深海探査は、地震対策にも死活的な影響を及ぼします。
 東日本大震災の四カ月後、三陸沖に潜った「しんかい6500」が日本海溝の斜面で幅、深さ約一メートル、南北に約八十メートル続く亀裂を見つけました。〇六年の調査では見当たらなかった亀裂です。巨大地震の現場でしょうか。
 翌年には地球深部探査船「ちきゅう」が海底を深く掘削し、断層を掘り出すことに成功しました。断層帯は厚さ五メートル以下と薄く、強度の弱い粘土を多く含む岩石からできていました。つまり、考えられていた以上に滑りやすい性質だったことが分かったのです。その発見は、南海トラフ地震で予想される津波の高さの見直しなどにつながっていきました。
 深海探査は、また、人間の愚かさも明らかにします。
 海洋研究開発機構は今年四月、深海のごみの映像を集めた「深海デブリデータベース」をネット上に公開しました。「しんかい6500」は日本海溝でマネキンの頭部を、無人探査機「かいこう」はマリアナ海溝の奥底でポリ袋を見つけています。
 英国の研究チームは二月、マリアナ海溝深くで採取した甲殻類から、ポリ塩化ビフェニール(PCB)などの有害な化学物質を検出したと発表しました。中国で最も汚染された川にすむカニの五十倍もの濃度だったといいます。
 地球活動の活発な場所に位置する日本は、だからこそ、古くから深海探査の先進国でした。その先導役だった「しんかい6500」も建造から三十年近くなり、技術の伝承や次世代探査システムの構築が課題となっています。
 海洋機構は、現在の6500に代わる「しんかい12000」構想も温めています。後押しする国民の声が大きくなれば、海洋最深部への有人探査が実現に近づくはずです。費用問題の壁は立ちはだかりますが、それでも、最後の秘境を詳しく見てみたい。
 人類の未来を左右する発見は、さらに続くに違いありません。


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